本当に心よりありがとうございます。

28年間、あっという間でした。今日まで何とか会社が存続できたこと、それはひとえにお客様である皆様方、社員の皆様方、家族の支え、そして多くの友人や経営者仲間の支えがあったからだと、本当に感謝の念が絶えません。

思えば28年前、1995年の夏、バブルの崩壊で大ダメージを受けていた株式会社日貿信(戦前の日本に三つしかなかった発券銀行、日本銀行、朝鮮銀行、台湾銀行のうち台湾銀行の残余資産をもって昭和32年4月に設立した日本初の優良ノンバンク/当時東証一部上場企業)を退職、紆余曲折があって設立したのが、このエヌ・エイ・アイ株式会社です。

当時、とあるきっかけで知り合ったペンシルバニア大学医学部、血液学がご専門の浅倉稔生教授(故人)。その浅倉先生に「日米の医学交流のお手伝いをして欲しい」と声をかけられスタートしたのが、このエヌ・エイ・アイ株式会社です。残念ながら、この日米の医学交流という夢は、様々な障壁と共に流れ去ってしまいました。そしてその代わりに産まれたのが現在の論文サポートサービスです。

日米の医学交流、人的交流というモデルにおいては大きな貢献はできなかったものの、その学術的側面、研究分野における日米の医学交流という側面においては、表舞台に立たない黒子の役割ではありますが、それなりに日本の科学の発展、そして社会の発展に貢献ができてきたと自負をしております。ただ創業当初は、その大きな後ろ盾となってくださっていた浅倉先生をはじめ、NAIの校閲者として名乗りをあげてくださった多くの海外の研究者の方達(現在のNAIの土台を構築してくださった方達です)は、「決して自分の所属や名前を出してくれるな」の一点張り。そうした背景下、認知度を高めるために、どれだけ辛酸を舐めたか...。そこには筆舌に尽くしがたい無数の物語がありました。

正直この論文サポート、特に論文校閲の奥深さが理解できたのは、実際にご利用いただいた先生方の論文が次から次へと一流ジャーナルにアクセプトされ始めてからのことでした。

色々と知恵を絞りました。どんな小さな疑問点も決して曖昧なまま残すことなく、とにかく”とことんキッチリ”と、文面の、そしてその研究や発見の裏に流れる意味を的確にくみ取った科学英語として、「だれもがその論文の趣旨を一瞬で理解できる」、そんな責任感に裏付けされた一流のサイエンス英文になるまでのお付き合いです。今では業界で当たり前に用いられるようになったQ&A方式。それをディファクトスタンダート化させたのも弊社だという自負があります。著者の先生方とNAIの校閲者との間で、何度も、何度も、これでもか、これでもかといった「しつこいくらいのやりとり」を行ない、最も受理(アクセプト)に近い科学英語、論文英語に精錬させていく。それだけがたった一つのゴールでした。当時はマイクロソフト社のMS Wordも、現在のようなコメント機能を持っていません。ですから校閲者からの質問は、「WHAT DO YOU MEAN ABOUT THIS?」という風に、大文字、太字で記入し、お客様にはその文章の直後に回答していただく、そんなルールを構築し、文章の落とし穴を埋めていく、そんなきめ細かな作業を繰り返し、繰り返し行なってまいりました。今では社員にその役割のすべてを任せきっておりますが、創業から10年ほどは、私自身もその中核となり、NAIの校閲者とお客様である先生方の橋渡しとなり、得意の英語と日本語の間を渡り歩きながら仲介役を果たした日々、今でも昨日のことのように思いだされます。

固有名詞は出せないですが、本当に何百人ものNAIのご利用者様である先生方が、●●大学教授、●●大学学部長、●●研究所所長などの重責を担われています。こうした先生方がご活躍されている姿を、テレビや新聞、学会の案内などで垣間見ると、本当にこの仕事、続けてきてよかったなと感じてしまいます。それは心の底から湧き出してくる、「やってきてよかった」といったじわっとした感涙。

創業以来遭遇してきた様々なトラブル事象、どうみても理不尽としか思えない査読者のコメントなどに悩まされ続けてまいりました。その度に、決して背を向けること、目を背けることなしに、どんな小さなトラブルにも正面から対峙してまいりました。具体的にいえば、NAIの校閲者Aが英文校閲を実施した論文が、投稿先X誌の査読者Yより、「英語が悪い」といったつれない言葉でリジェクトされたなら、その英文が本当に悪いのか、NAIのベテラン校閲者Bに精査してもらいます。実はその結果、英語には問題ないケースが大半ではあるのですが、何とか別のスタイルの英文に書き換え同雑誌に再投稿、捲土重来をはかっていただく。こんな手順は当たり前に行ってまいりました。

もちろんお叱りを受けたこともあります。しかしながら、たとえどんなお叱りを受けたとしても、自然消滅や風化を待つ、そんな無責任な対応をすること否とする、そんな社風づくりをしてきたつもりです。そしてそれこそが、NAIの経営理念にも粛々と読み込まれている「とことんキッチリおつきあい」のフルサポートの体質を作り上げてきたと信じて疑いません。

企業の寿命は30年と言います。残りはあと2年です。

正直この数年、コロナ禍の下、厳しい試練の場を、繰り返し、繰り返し、経験させられました。まるで、「あなたの会社の存在意義がなくなったのなら、あなたは即座に市場から撤退しなくてはなりません」と、神の声が叫んだかのように。

コロナ禍が明け「創業28周年」を迎えることになりました。そんな折、今一度、弊社の論文サポートのウェブページを眺めてみる機会をもちました。そこで気付かされたのが、これまでの弊社のサービスの真髄が伝えきれていない点が、あまりにも多くあるという衝撃の事実でした。これだけお客様のご評価を頂戴しているにも関わらず、表現方法が下手すぎたのです。

よしそれなら、思い切ってこの創業28周年に合わせてねじり鉢巻きでウェブページの改定を行なおう。その中で、NAIの本当の価値を、今一度、お客様に理解していただくツールとしてのウェブサイトを構築しよう。さらには、お客様のお役にたてる、最高のパフォーマンスを出せる新しいサービスをリリースしよう。そう考えてこの2023年9月7日、創業28周年の記念日の新サイトリリースを目指し、ウェブの大幅改定を行わせていただきました。ぜひご覧いただければ幸いです。そしてこの機会に「リバイスまで安心包括パック」と「レスポンスレター限界まで代理作成サービス」の2つの新サービスをリリースさせていただきました。

業界の競合も激しくなっております。先行き不透明なVUCAの時代です。常に『真の意味でのお客様のご満足、ご納得』を頂戴しつづけることができるような、お客様のご期待を、驚きと感動で上回る水準のサービスを提供し続けていかなければ生き残ることすらできない、そんな厳しい時代です。そしてそこに必要なものは、決して小手先のテクニック的な何かではなく、本質であると信じて疑いません。

正直、社員の皆様やNAIを支えてくださっている校閲者や翻訳者の皆様方には、この先も無理難題をお願いし続けなくてはならないと思っています。ご理解ください。その無理難題の先にあるのは、お客様の真のご満足であり、多少口はばかられますが、縁の下の力持ちとして、世界の科学の発展に寄与することができている、歴史の歯車になれているという充足感、充実感です。

NAIの力の真髄は「優秀な日本人コーディネーター」です。彼等、彼女たちの品質に対するこだわりが、NAIのサービスのすべてを支えております。そしてそのコーディネーターが、NAIを支えてくださっている校閲者や翻訳者の方たちに、97%のクオリティを99%に引き上げるための神業をお願いし続けている、その「決して諦めない姿勢」が、論文サポートのNAIを支えています。

この先も、決して歩みを止めることなく、「NAIさんに頼めば、嘘偽りなくなんとかしてくれる」、そんな心強い応援のお言葉を胸に、『ブレのない徹底した品質の追求』の道を歩み続けていきたいと考えております。

お客様である皆様方、関係者の皆様方、そして社員の皆様方。エヌ・エイ・アイ株式会社は、この先も、どんな困難に遭遇したとしても、あらゆるピンチをチャンスに変え、決して諦めることなく前へ、前へと進んでまいります。

引き続き変わらぬご愛顧、ご指導、ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。

創業28周年記念日 2023年9月7日
エヌ・エイ・アイ株式会社
代表取締役 伊藤 秀司