「英語論文を書いていると、文法的には合っていると思うのに、なぜか修正される」
「前置詞や動詞の使い方になると、自信がなくなる」
そんな経験はありませんか?
NAIでは2017年7月に、Dr. Sonia Sharminによる「Typical Writing Mistakes of Japanese learners of English PART I」を紹介しました。そこでは、冠詞の抜け、疑問文の語順、前置詞の省略、三人称単数の使い方など、日本人英語学習者にありがちな8つのミスが取り上げられていました。
今回はその続編として、2017年8月に公開された「Typical Writing Mistakes of Japanese learners of English PART II」から、さらに8つの典型的なミスをご紹介します。
Part IIでは特に、単数・複数、形容詞、前置詞、動名詞、不定詞、時制、所有格、代名詞など、英文を書く際に迷いやすいポイントが取り上げられています。
英語論文を書く研究者にとっても参考になる内容ですので、一つずつ見ていきましょう。
単数形と複数形を混同していない?
最初に紹介されているのは、非常に基本的ですが、意外と見落としやすい単数形・複数形の使い分けです。
コラムでは、
“Mixing up Singular and Plural”
として紹介されています。
例えば、
“No Excuse!”
ではなく、
“No Excuses!”
が正しい表現です。
日本語では、名詞が単数なのか複数なのかを文法上必ずしも明示する必要がありません。
「言い訳はない」と言うときも、「言い訳」という名詞そのものに複数形の変化はありません。
一方、英語では、可算名詞について単数・複数を明確にする必要があります。
これは英語論文でも非常に重要です。
例えば、
result
なのか、
results
なのか。
method
なのか、
methods
なのか。
たった一文字の「s」ですが、意味が変わってしまいます。
特に論文では、
- participants
- samples
- experiments
- findings
- results
- data
など、複数形で使われる名詞が数多く登場します。
英文を見直すときには、「文法的に間違っていないか」だけでなく、その名詞が単数なのか複数なのかも確認してみましょう。
命令文と「You will ...」は違う
次に紹介されているのが、命令文の使い方です。
コラムでは、
“‘You will...’ sounds like a prediction to native English speakers, which is quite different from an imperative.”
と説明しています。
例えば、
“You will do homework tonight.”
と書くと、英語話者には「あなたは今夜宿題をするでしょう」という予測のように聞こえる可能性があります。
命令するのであれば、
“Do your homework tonight.”
とするのが自然です。
日本語では、文脈や語尾によって命令・指示・予測などを判断することがありますが、英語では文の形によって意味が大きく変わります。
研究論文では命令文を使う機会はそれほど多くありませんが、実験手順やInstructions、学会発表資料などでは役立つ知識です。
例えば、
Add 10 mL of the solution.
Mix the samples thoroughly.
Remove the supernatant.
など、研究手順では命令形がよく使われます。
形容詞を重ねれば強調できる?
続いては、形容詞の重複です。
コラムでは、
“Adjective doubling is rare in English and has a different meaning (emphasis).”
と説明しています。
例えば、
“different different color”
ではなく、
“different colors”
とするのが適切です。
日本語では、「いろいろな色」「さまざまな色」のように、同じような意味の言葉を繰り返したり、表現を重ねたりすることがあります。
しかし英語では、単純に同じ形容詞を繰り返せば自然になるとは限りません。
英語で同じ形容詞を繰り返す場合には、強調など別のニュアンスが生じることがあります。
英語論文では特に、簡潔で明確な表現が求められます。
「different different methods」と書くより、
different methods
あるいは文脈に応じて、
various methods
などとする方が自然でしょう。
「前置詞」は単語ごとに覚える
Part IIで特に参考になるのが、前置詞の間違いです。
コラムでは、
“Using a wrong preposition”
として、具体的な単語を挙げながら解説しています。
英語学習では「in=~の中」「to=~へ」「at=~で」のように、日本語訳を覚えて前置詞を使おうとしがちです。
しかし実際には、単語によって決まった前置詞の組み合わせがあります。
absorb
例えば、
“The man was absorbed at his work.”
ではなく、
“The man was absorbed in his work.”
です。
つまり、
be absorbed in ~
という組み合わせで覚える必要があります。
accustom
同様に、
“I am accustomed with cold weather.”
ではなく、
“I am accustomed to cold weather.”
です。
つまり、
be accustomed to ~
となります。
aim
さらに、
“He aimed on the bird.”
ではなく、
“He aimed at the bird.”
です。
このように、「この単語にはこの前置詞」という組み合わせを覚えることが重要です。
「動詞+前置詞」は英語論文でも重要
このポイントは、研究論文を書く研究者にとって特に重要です。
論文では、
- be associated with
- depend on
- contribute to
- consist of
- result in
- result from
- be involved in
- be based on
- be derived from
など、特定の前置詞とセットで使われる表現が非常に多く登場します。
例えば、
This factor is associated with disease progression.
と書くべきところを、
This factor is associated to disease progression.
としてしまえば、不自然な英文になってしまいます。
単語の意味を覚えるだけではなく、その単語がどの前置詞と一緒に使われるのかまで意識することが、自然な英文を書くための重要なポイントです。
不定詞と動名詞をどう使い分ける?
次に紹介されているのが、不定詞(to + 動詞)と動名詞(動詞+ing)の使い分けです。
これは英語学習者にとって非常に悩ましいポイントの一つです。
コラムでは、まず前置詞の後では動名詞を使うケースを紹介しています。
例えば、
“Do your work without to speak.”
ではなく、
“Do your work without speaking.”
となります。
同様に、
“He went away instead to wait.”
ではなく、
“He went away instead of waiting.”
です。
ここで重要なのは、
without + 動名詞
instead of + 動名詞
という形です。
つまり、前置詞の後ろに動詞を置きたい場合、そのまま「to + 動詞」にするのではなく、**動名詞(-ing)**になることがあります。
「capable of」「insist on」の後も -ing
さらにコラムでは、特定の表現についても紹介しています。
例えば、
“He is quite capable to do that.”
ではなく、
“He is quite capable of doing that.”
です。
つまり、
be capable of + -ing
となります。
また、
“He insisted to go to London.”
ではなく、
“He insisted on going to London.”
です。
こちらは、
insist on + -ing
という形です。
このような表現は、単語を一つずつ覚えるだけではなかなか身につきません。
「capable=能力がある」
「insist=主張する」
という意味だけでなく、
capable of doing
insist on doing
という「かたまり」で覚えると、実際に英文を書くときに使いやすくなります。
didの後に過去形を置いていない?
次は、didの後の動詞の形です。
例えば、
“Did you went to school yesterday?”
ではなく、
“Did you go to school yesterday?”
が正しい形です。
否定文でも、
“I did not went to school yesterday.”
ではなく、
“I did not go to school yesterday.”
となります。
ポイントは、didがすでに過去を示しているため、その後の動詞は原形になるということです。
これは先ほどPart Iで紹介した、
Does the gardener water the flowers?
というルールと似ています。
doesの後は原形、didの後も原形。
また、
He can speak English.
のように、助動詞の後も原形です。
英語では、一つの文の中で時制などの情報をどこで示しているのかを意識すると理解しやすくなります。
所有格は何にでも使えるわけではない
15番目は、所有格('s)の使い方です。
コラムでは、
“These should not be used for objects.”
として、物についての所有格の使用に注意を促しています。
例として、
“His room’s window is open.”
ではなく、
“The window of his room is open.”
という表現が紹介されています。
ただし、ここは現代英語では少し注意が必要なポイントです。
実際の英語では、物についても「's」を使う表現は一般的に存在します。例えば、
the company's website
the Earth's surface
などです。
そのため、「物には絶対に'sを使わない」と覚えるより、どのような名詞の組み合わせが自然なのかを考えることが大切です。
特に科学論文では、
the patient's condition
the patient's blood sample
the study's limitations
など、所有格が自然に使われるケースもあります。
したがって、このコラムの例は「所有格を使うこと自体が間違い」というより、名詞同士の関係に応じて自然な表現を選ぶ必要があるという観点から読むとよいでしょう。
「It was him」は間違い?
最後に紹介されているのが、be動詞の後に置く代名詞の格についてです。
コラムでは、
“It was him.”
ではなく、
“It was he.”
としています。
これは、be動詞の後に主格(nominative case)を置くという、伝統的な文法ルールに基づいた説明です。
ただし、ここも現代英語では注意が必要です。
実際の会話では、
It was him.
のような表現は非常に一般的に使われています。
そのため、現在の英語を考えると、「It was himは完全な誤り」と考えるのは適切ではありません。
むしろ、文法書で扱われる形式的なルールと、実際の英語使用には違いがあるということを知っておくとよいでしょう。
特に研究論文では、日常会話とは異なるフォーマルな文体が求められるため、論文の目的やジャーナルのスタイルに応じて表現を選択することが重要です。
英語論文で大切なのは「単語」より「組み合わせ」
今回のPart IIを読んでみると、単純な文法ミスだけでなく、単語同士の組み合わせに関する注意が多いことに気づきます。
例えば、
absorbed in
accustomed to
aimed at
capable of doing
insisted on doing
などです。
これは英語論文を書くときにも非常に重要です。
研究者の方が英文を書くとき、
「この単語の意味は合っている」
「文法も間違っていない」
と思っていても、実際にはその単語と一緒に使う前置詞や動詞の形が不自然というケースがあります。
そのため、英語を書くときには単語を一つずつ確認するだけでなく、
「この単語は、実際にはどのような形で使われるのか?」
という視点を持つことが重要です。
「日本語から英語に置き換える」だけでは不十分
Part I、Part IIを通して共通しているのは、日本語と英語の違いを意識することの重要性です。
日本語をまず頭の中で作り、それを単語ごとに英語へ置き換えていくと、
「日本語としては自然だけれど、英語としては不自然」
という英文になってしまうことがあります。
特に、
- 冠詞
- 単数・複数
- 前置詞
- 動詞の形
- 不定詞・動名詞
- 代名詞
などは、日本語との違いが大きいため注意が必要です。
英語論文では、研究内容そのものが正確であることはもちろんですが、読み手に誤解なく伝わる文章であることも重要です。
NAIの英文校閲で、こうした細かなミスもチェック
NAIでは、科学論文を中心とした英文校閲・翻訳サービスを提供しています。
今回紹介したような冠詞、単数・複数、前置詞、動詞の形といった基本的な文法・語法だけでなく、英語として自然な表現になっているか、研究者の意図が明確に伝わるかという観点から英文を確認することができます。
例えば、
「前置詞が合っているか自信がない」
「日本語を英訳した文章が自然か確認したい」
「文法的には合っているはずなのに、英文校閲で毎回たくさん修正される」
「自分の表現をできるだけ残したまま、必要なところだけ改善したい」
という方には、英文校閲の活用がおすすめです。
特に英語論文では、一つの単語の後ろにどの前置詞を置くのか、動詞を原形にするのか-ing形にするのかといった細かな違いが、文章全体の自然さを左右することがあります。
まとめ――「知っている単語」を「正しく組み合わせる」
今回の「Typical Writing Mistakes of Japanese learners of English PART II」では、以下の8つのポイントが紹介されていました。
- 単数形と複数形の混同
- 命令文と “You will...” の混同
- 形容詞の重複
- 間違った前置詞の使用
- 不定詞と動名詞の使い分け
- didの後に過去形を置くミス
- 所有格の使い方
- be動詞の後の代名詞の格
その中でも、英語論文を書く研究者にとって特に重要なのは、「単語単体」ではなく「単語の組み合わせ」で英語を考えることではないでしょうか。
例えば、
absorbed in
accustomed to
aimed at
capable of doing
insisted on doing
のように、英語には決まった形で使われる表現が数多くあります。
「この単語の意味は何か?」だけでなく、
「この単語は、どのような単語と、どのような形で一緒に使われるのか?」
まで意識することで、より自然で読みやすい英文に近づけることができます。
英語論文を書き終えたら、スペルや文法だけをチェックするのではなく、前置詞、動詞の形、単数・複数、語の組み合わせにも目を向けてみてください。
そして、「自分では正しいかどうか判断できない」という場合には、第三者による英文校閲を活用するのも一つの方法です。
NAIでは、研究者の皆様がご自身の研究成果をより正確かつ自然な英語で伝えられるよう、科学論文の英文校閲・翻訳をサポートしています。
Part I、Part IIと続いた今回のコラムを、ぜひ論文投稿前の英文チェックにもお役立てください。
