国際学会のプレゼン資料、こんな点を見落としていませんか? 英文校閲者がチェックする5つのポイント
論文を投稿する前には英文校閲を依頼しても、国際学会で使用するスライドや読み原稿は、ご自身で英訳・作成するという研究者は少なくありません。論文と違い、プレゼン資料は「発表者が話しながら聴衆に伝える」ことを前提に作られるため、専用のチェックポイントで確認することが求められます。
近年はAIツールを活用すれば、英語のスライドや発表用の読み原稿を短時間で作成することも可能になりました。しかし、それぞれが英語として自然に見えても、スライドに表示される内容と、実際に話す内容がうまく対応しているとは限りません。AIが生成した文章は、文法的には正しくても、発表の場面で使うには不自然だったり、スライドの情報とずれていたりすることがあります。
発表では、聴衆はスライドを見ながら発表者の説明を聞きます。そのため、スライドだけ、あるいは読み原稿だけを個別に整えるのではなく、両者を一つの発表として確認することが大切です。論文校閲でチェックする文法や表現の正確さは当然ながら、それだけではプレゼン資料としての品質を担保できません。
今回は、英文校閲者がスライドと読み原稿を確認する際に意識している代表的なポイントをご紹介します。
1. スライドに文章を詰め込みすぎていないか?
論文では背景や考察を丁寧に説明することが重要ですが、スライドでは「短時間で要点を把握できること」が求められます。学会発表では1枚のスライドが画面に表示される時間が数十秒程度と短く、その間に聴衆は内容を読み取り、発表者の話も聞かなければなりません。
論文の文章や読み原稿をそのままスライドに載せると、以下のような問題が生じます。
- 一文が長く、読んでいる間に説明が先へ進んでしまう
- 情報量が多く、重要な結果が埋もれてしまう
- 発表者の説明を聞かず、スライドを読むことに集中させてしまう
とくに、論文の文章をスライドに流用する場合は、段落ごと切り取るのではなく、要点を箇条書きで簡潔に表現し直す必要があります。英文校閲では、文法や表現の正確さだけでなく、スライド上の英文が簡潔で、限られた表示時間でも理解しやすいかという視点でも確認します。
2. スライドと読み原稿(スクリプト)の内容は対応しているか?
発表のために読み原稿(スクリプト)を準備される方も多いかと思います。スライドと読み原稿を別々に作成すると、内容のずれが生じることがあります。特に、作成途中でどちらか一方だけを修正した場合には注意が必要です。AIツールで別々に生成した場合にも、同様のずれが起こりやすくなります。
例えば、以下のような違いが生じることがあります。
- スライドに示した数値と、読み原稿で説明する数値が異なる
- 読み原稿では触れている結果が、スライド上には示されていない
- スライドの見出しと、口頭で説明する結論の重点がずれている
- 図表を示すタイミングと、読み原稿の説明順が合っていない
こうした違いは、発表者自身の混乱だけでなく、聴衆の理解を妨げる原因になります。スライドと読み原稿を一緒に英文校閲にご依頼いただくことで、表示される情報と話す内容が対応しているかを確認できます。
3. 専門用語や略語は、資料全体で統一されているか?
専門用語や略語は、スライド内だけでなく、読み原稿との間でも統一されている必要があります。とくに複数のスライドにまたがって同じ用語を使う場合や、共同研究者がそれぞれ別の部分を作成した場合には、表記の揺れが生じやすくなります。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
- スライドと読み原稿で、同じ概念に異なる英語表現を使用している
- スライドでは略語を使用しているが、読み原稿では別の呼び方をしている
- 略語を初めて使う箇所で正式名称を示していない
- 複数形、単数形、ハイフンの有無などの表記が揺れている
耳で聞く発表では、用語の違いを後から読み返すことができません。表記と読み方を揃えることで、聴衆が同じ概念を迷わず追えるようになります。
4. 読み原稿が「聞いて理解しやすい英語」になっているか?
文書として自然な英文であっても、そのまま読み上げると聞き取りにくいことがあります。読み原稿では、目で読む英文とは異なる配慮が必要です。書き言葉として整っている文章でも、話し言葉としては硬すぎたり、一文が長すぎたりすることがあります。
英文校閲では、例えば次のような点を確認します。
- 一文が長すぎず、途中で意味を見失いにくいか
- 書き言葉に偏らず、口頭発表として自然な表現になっているか
- 重要な結果や結論へ、無理なく話がつながっているか
- 図表を指し示す表現が、実際のスライドと対応しているか
- 読み上げたときに、予定された発表時間に収まりやすい分量か
難しい単語を単純な表現に置き換えることが常に正解とは限りませんが、聴衆が一度聞いて理解できる文の長さや流れになっているかは重要です。
5. 研究結果のニュアンスと、伝えたいメッセージは明確か?
プレゼンでは説明時間が限られるため、短くまとめようとする過程で、研究結果のニュアンスが変わってしまうことがあります。論文では丁寧に hedging(慎重な表現)を使って書かれていた内容が、スライドの短い表現では断定的に見えてしまうケースは少なくありません。
例えば、以下のような点を確認します。
- 「示唆する」という結果が、断定的な結論として表現されている
- 研究の限界を読み原稿では説明しているが、スライド上の結論が強すぎる
- 一枚のスライドに複数のメッセージがあり、何が重要か分かりにくい
- スライドのタイトルと、読み原稿で強調しているポイントが一致していない
スライドの短い表現と読み原稿の詳しい説明を組み合わせたときに、研究者が本来伝えたい範囲や確度が正しく伝わることが重要です。
スライドと読み原稿の英文校閲に対応しています
NAIでは、スライドと読み原稿の両方をお預かりし、英語表現の自然さに加えて、以下の点にも配慮して英文校閲を行います。
- スライドと読み原稿の内容の整合性
- 専門用語や略語の統一
- スライド上で簡潔に伝わる英文
- 読み上げたときに理解しやすい英文
- 研究結果のニュアンスを損なわない表現
スライドを見せながら、読み原稿に沿って発表する場合には、どちらか一方だけでなく、発表全体として内容を見直すことが大切です。国際学会での発表成功に向けて、ぜひご活用ください。
