AI時代の英文校正、その「現在地」と「これから」、 専門家による校閲がなぜ今も不可欠なのか

1.はじめに ――論文執筆の風景は、確かに変わった

近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な発展により、論文執筆や英文校正のあり方は劇的に変わりつつあります。研究者の間でも、英文の文法修正・表現改善・要約作成などにAIを日常的に活用するケースが増えてきました。「数年前には考えられなかったスピードで原稿が整う」と感じている方も多いのではないでしょうか。

その一方で、こうした流れの中で必ず浮上するのが次の問いです。

「AIがあれば、人間による校閲はもう必要ないのではないか?」

結論から言えば、現時点でこの問いに「Yes」と答えるのは、まだ慎重であるべきです。AIは確かに強力なツールですが、学術論文という極めて高度な知的成果物において、AIだけに任せきりにすることには、いくつもの落とし穴が存在します。

本記事では、最新の研究成果を踏まえながら、「AI校正の現在地」と「人間の校閲者がなお果たすべき役割」について、わかりやすく整理していきます。


2.最新研究が示す、AI校正の「光」と「影」

その一例として注目されているのが、August et al. (2026) によって PLOS ONE に掲載された研究論文です。

August, E., Gray, R., Griffin, Z., Klein, M., Buser, J. M., Morris, K., Endale, T., Teklu, H., Pebolo, P. F., Anderson, E., Laubepin, F., & Smith, Y. R. (2026). Does ChatGPT enhance equity for global health publications? Copyediting by ChatGPT compared to Grammarly and a human editor. PLOS ONE, 21(2), e0342170. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0342170

この研究では、ChatGPT、Grammarly、そして人間の編集者(プロフェッショナルなコピーエディター)の三者による英文校正の質を比較し、それぞれの特徴を多角的に検証しています。研究の背景には、「グローバルヘルス分野において、非英語ネイティブの研究者がより公平に学術発信できる環境をAIは作れるのか?」という、いま世界的に議論されているテーマがあります。

研究が明らかにしたこと

研究結果からは、AIツールと人間の校閲者の役割の違いが浮き彫りになりました。

  • ChatGPTは、文章の流暢性や可読性の向上に有効 → 自然で読みやすい英文への書き換えは得意
  •  AIツールはしばしば、必要以上に多くの修正を加える傾向がある → 著者本来の文体やニュアンスを失わせる「過剰編集」のリスク
  • 専門的な文脈の理解、著者の意図の保持という点では、人間の編集者が依然として重要な役割を果たす → 専門用語の機微、研究分野固有の表現、著者が伝えたい論旨の核心を守れるのは人間

この結果は、「AIは万能ではない」という事実を改めて科学的に裏付けています。AIは便利な相棒であっても、研究者の代理人ではない、そのことを、この研究は静かに示しているのです。


3.なぜ学術論文は「文法の正しさ」だけでは足りないのか

生成AIは、確かに非常に優れた文章支援ツールです。しかし、学術論文には、単なる文法的な正しさを超えた多くの要素が求められます。

学術論文に求められるもの

要素内容
研究の背景理解なぜこの研究が必要なのか、文脈をふまえた表現
専門分野特有の用語同じ単語でも分野ごとに意味やニュアンスが異なる
論理展開の妥当性仮説→検証→結論への流れが破綻なくつながっているか
読者への伝わりやすさ想定読者(査読者・同分野研究者)に届く表現か
著者の独自性の保持その研究者ならではの「声」を失わせない
倫理的・文化的配慮国際誌に求められる中立性・包括性

これらは、過去の膨大なテキストパターンを統計的に学習しているAIにとって、もっとも苦手とする領域です。AIは「ありそうな文章」を生成することには長けていますが、研究者本人が「本当に伝えたいニュアンス」や、分野固有の暗黙の慣習を完全に理解することは、まだできません。

AIが見落としやすい具体例

  • 「significant」を統計的有意性と一般的な「重要性」のどちらで使っているかの判別
  • 分野ごとに異なる略語の正しい綴り(例:医学のCTと統計のCT)
  • 著者が意図的に選んだ控えめな表現(hedging)を、AIが断定的に書き換えてしまう
  • 文化的・倫理的に慎重な表現を、機械的に「より自然な」言い回しに置き換えてしまう

こうした「微妙な、しかし致命的な書き換え」が、査読者の印象や研究の評価を大きく左右することもあるのです。


解決策 ― 「AI × 人間の専門家」というハイブリッド校閲

こうした課題に対する、もっとも現実的で効果的な解答が、「AIと人間の専門家を組み合わせたハイブリッド校閲」です。

NAI(エヌ・エイ・アイ株式会社)の「AI依存度低減校閲サービス」は、まさにこの考え方に基づいて設計されています。

NAIの校閲サービスが大切にしていること

  • 専門知識をもつ校閲者が原稿を確認 → 各分野の背景を理解したエディターが、著者の意図と研究内容をふまえて修正提案を行います
  • 著者の「声」を残す編集姿勢 → 過剰な書き換えを避け、研究者本人の表現を尊重します
  •  iThenticateによる詳細チェック → AIライティング特有の不自然な表現や、過度な定型表現(いわゆる "ChatGPT臭" のある言い回し)を点検
  • 国際誌投稿(Q1ジャーナル等)を見据えた品質基準 → 査読者に伝わる、論理的で説得力のある英文へ
  • AIを「使う側」のスタンス → AIの長所を最大限活かしつつ、最終判断は専門家が担うことで、安心と品質を両立

つまりNAIは、AIを否定するのではなく、AIの限界を理解したうえで「正しく使いこなす」ことを大切にしているのです。


「AI活用 × 専門家校閲」が、これからのスタンダードへ

「AI依存度低減校閲」という名称から、どうしても、「AI利用で執筆した論文を偽装して人間が書いたようにする」という風に誤解を受けがちです。しかしながらエヌ・エイ・アイ株式会社のサービスは、まったく異なります。むしろAIとコラボしながら、徹底的に高品質の科学論文に近づけていくことを目的としています。

生成AIは、論文執筆の効率化において、もはや欠かせない存在です。アイデアの整理、初稿のたたき台作成、簡単な文法チェック、こうした場面でAIを使わない手はありません。

しかし、研究成果の本当の価値を、正確かつ魅力的に伝えるためには、人間による確認と判断が依然として不可欠です。特に国際誌への投稿では、

  • 単なる英文の正確さ
  • にとどまらず、
  • 研究の意義
  • 独創性
  • 分野への貢献
  • 査読者の関心への対応

といった多層的な要素を適切に表現することが求められます。

そうした多層的な要素を織り込み、総合的にサポートするのが、エヌ・エイ・アイ株式会社のAI依存度低減校閲です。

推奨される論文執筆のワークフロー(一例)

① 研究者が日本語/英語で初稿を執筆
        ↓
② AIで文法・流暢性のドラフト改善
        ↓
③ 専門家(NAIの校閲者)による
  ・意図の確認
  ・専門用語の妥当性チェック
  ・論理展開のレビュー
  ・AI過剰編集の検出と修正
        ↓
④ iThenticateで最終チェック(数回の校閲の途中で、そのたびにiThenticateのAI Writing Scoreを確認)
        ↓
⑤ 検収
     ↓
⑥ 投稿

このように、AIを賢く活用しながら、最終的には専門家の校閲を受ける、これが、これからの論文品質を高める最も確実な選択肢となると信じて疑いません。


おわりに ― AIと人間が「補い合う」時代へ

AI vs 人間、ではありません。 AI × 人間こそが、これからの学術コミュニケーションの正解です。

研究者のみなさまが、ご自身の研究成果を世界に届けるための最良のパートナーとして、NAIは「AI時代だからこその、人の目による校閲」をご提供します。論文の質に妥協したくないすべての研究者の方に、ぜひ一度ご相談いただければ幸いです。


参考文献

August, E., Gray, R., Griffin, Z., Klein, M., Buser, J. M., Morris, K., Endale, T., Teklu, H., Pebolo, P. F., Anderson, E., Laubepin, F., & Smith, Y. R. (2026). Does ChatGPT enhance equity for global health publications? Copyediting by ChatGPT compared to Grammarly and a human editor. PLOS ONE, 21(2), e0342170. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0342170

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