学術出版に広がる「AI査読支援」の波
近年、「AIを査読支援に活用する」という動きが学術出版の世界で急速に広がっています。大手出版社の中には、査読プロセスの一部にAIツールを導入することを公式に認めるところも増えており、投稿された原稿の初期スクリーニングや、剽窃・データ不整合のチェック、参考文献の整合性確認などにAIが用いられるケースが一般的になりつつあります。
AIは、文章の整合性や引用の不一致、論理構成、統計的記述の妥当性などを短時間でチェックできるため、編集部や査読者の負担軽減につながると期待されています。査読者不足が慢性化している分野では、AIによる補助が査読プロセスの迅速化にも貢献しています。
一方で、AIは文脈や研究分野特有の背景を十分に理解できず、研究者から見ると「少し的外れでは?」と思う指摘をする可能性もあります。特にニッチな専門領域や、既存の理論に対して新しい視点を提示する研究では、AIが「一般的な枠組み」から外れた記述を「誤り」として指摘してしまうことも珍しくありません。また、皮肉なことに、著者が最も工夫を凝らした独創的な部分ほど、AIには「異常値」として映ってしまうこともあるのです。
査読コメントへの反論――多くの研究者が抱える共通の悩み
実は、このような状況に限らず、NAIには以前から次のようなご相談が数多く寄せられています。
「査読コメントに納得できないけれど、強く反論するとリジェクトされそうで怖い。」 「自分の考えは伝えたい。でも査読者を不快にさせたくない。」 「どこまで反論していいのか分からない。」 「英語での反論の書き方に自信がなく、意図しない誤解を招かないか心配。」
この悩みは、査読者が人間でもAIでも、本質的には同じです。むしろAI査読が広がるこれからの時代は、AIが指摘した内容に対して、著者が丁寧に「なぜその記述が妥当なのか」を説明する場面がさらに増えていくと予想されます。つまり、レスポンスレター(Rebuttal Letter/Response Letter)の重要性は、これまで以上に高まっていくのです。
「反論」ではなく「説明」を意識する
査読コメントの中には、誤解に基づくものや、著者の意図が十分に伝わっていないために生じるものがあります。査読者は限られた時間の中で多くの原稿を読むため、著者にとっては明らかな前提でも、読み取りにくいことがあるのです。
そのような場合、「査読者が間違っています」「その指摘は誤解に基づいています」と書いてしまうと、たとえ内容が正しくても、受け取る側に強い印象を与えてしまうことがあります。査読者も一人の研究者であり、自分の指摘を頭ごなしに否定されれば、感情的な反応を示す可能性は否定できません。
一方で、以下のような表現を用いると、印象は大きく変わります。
- 「ご指摘いただきありがとうございます。」
- 「ご懸念は理解いたしました。」
- 「私たちの説明が十分ではありませんでした。」
- 「以下の理由から、現時点では元の記述を維持したいと考えています。」
これらは、相手への敬意を示しながら、自分たちの考えをしっかり伝える表現です。ポイントは、「反論」を「説明」として位置づけ直すこと。査読者の指摘を一度受け止め、その上で自分の立場を根拠とともに提示する――この流れが、査読者に「著者は誠実に対応している」という印象を与えます。
伝えたい内容は同じでも、表現を少し工夫するだけで印象は大きく変わり、結果としてリバイスの受理率にも影響することがあるのです。
英語では「言い方」が評価を左右することも
特に英語のレスポンスレター(Rebuttal Letter/Response Letter)では、「何を伝えるか」と同じくらい、「どう伝えるか」が重要です。英語圏の学術文化では、直接的な否定は避け、婉曲的で建設的な表現を用いるのが一般的なマナーとされています。
日本語をそのまま英訳すると、必要以上に直接的な表現になってしまうことがあります。日本語では省略されがちな主語やクッション言葉が、英訳の過程で失われてしまうためです。
例えば、以下のような表現は、内容によっては強い印象を与える可能性があります。
- "We disagree."
- "This comment is incorrect."
- "The reviewer misunderstood our point."
一方で、次のように表現を工夫すると、反論ではなく建設的な議論として受け取られやすくなります。
- "We respectfully disagree with this point, and would like to explain our reasoning below."
- "We appreciate the reviewer's insightful comment; however, we believe that..."
- "To clarify this point, we have revised the manuscript as follows..."
- "We thank the reviewer for raising this important issue. We would like to provide additional context that may address the concern."
こうした表現は、単なる「言葉の飾り」ではありません。査読者に「この著者は自分の指摘を真剣に受け止めた上で、根拠に基づいて応答している」というメッセージを送るための、極めて実務的なコミュニケーション技術です。
AIが査読支援を行う場面が増えたとしても、最終的に判断するのは編集者や査読者、つまり人間です。だからこそ、礼儀正しく論理的な文章は、これまで以上に重要になるでしょう。
レスポンスレターで意識したい3つのポイント
実際にレスポンスレターを書くときには、次の3点を意識するだけでも、査読者に伝わる印象が大きく変わります。
1つ目は、コメントごとに「感謝→理解→回答」の順で構成することです。 冒頭でコメントに対する感謝を示し、次に指摘の意図を自分がどう理解したかを述べ、最後に具体的な対応や説明を示します。この流れがあると、査読者は「自分の指摘がきちんと受け止められた」と感じやすくなります。
2つ目は、原稿のどこをどう変更したかを具体的に示すことです。 「〜ページの〜行目を以下のように修正しました」と明記し、必要に応じて修正前後の文章を引用します。これにより査読者は再読の負担が減り、著者の対応を評価しやすくなります。
3つ目は、変更しなかった箇所についても丁寧に説明することです。 すべての指摘に従う必要はありませんが、「変更しない理由」を根拠とともに示すことで、著者の立場が明確になります。ここで科学的根拠、先行研究、データを引用しながら説明すれば、査読者も納得しやすくなるでしょう。
NAIではレスポンスレターの校閲も承っています
NAIでは、リバイス校閲プランをご利用いただく際に、レスポンスレター(Rebuttal Letter/Response Letter)の校閲もおすすめしています。
例えば、次のようなご要望に対応しています。
- 「内容は変えずに、もう少し柔らかい印象にしたい。」
- 「査読者への敬意が伝わる表現にしたい。」
- 「反論はしたいが、角が立たない文章にしてほしい。」
- 「英語の言い回しが強すぎないか確認してほしい。」
こうしたご要望があれば、その意図を踏まえてネイティブ校閲者が表現を調整いたします。単なる文法チェックにとどまらず、学術英語特有のトーンや、査読者との距離感を意識した表現へと整えていくのが、NAIの校閲の特徴です。
研究内容や主張を変えることなく、より自然で丁寧な英文へ仕上げることで、著者が伝えたいメッセージをより適切な形で査読者へ届けるお手伝いをしています。
また、「論文本体は不要で、レスポンスレターだけ見てほしい」という場合でも対応可能です。特に、リバイスの締め切りが迫っている状況では、レスポンスレターだけを短期間で仕上げたいというご相談も増えており、柔軟にご対応しております。
査読者は「敵」ではありません
査読コメントに納得できないとき、「反論してはいけない」と考える必要はありません。査読は、著者と査読者が一緒に論文の質を高めていくための対話のプロセスです。査読者はあなたの研究を潰しに来る「敵」ではなく、むしろ第三者の視点から研究を強化してくれる「共著者に近い存在」だと捉えることもできます。
大切なのは、感情的になることではなく、科学的根拠を示しながら、相手への敬意を忘れずに説明することです。反論すべきところは堂々と反論し、受け入れるべき指摘は素直に受け入れる――この使い分けができるようになると、レスポンスレターは単なる「弁明の場」ではなく、「研究の価値をあらためて主張する場」へと変わっていきます。
AI査読が広がるこれからの時代も、人間による査読の時代も、この原則は変わりません。むしろ、AIによる指摘が増えることで、「人間らしい丁寧なコミュニケーション」の価値はさらに高まっていくと言えるでしょう。
「伝えたいことはある。でも、どう書けばいいか分からない。」
そんなときは、一人で悩まず、レスポンスレターの校閲をご活用ください。伝えたい内容はそのままに、査読者へより伝わりやすい英文となるよう、NAIがお手伝いいたします。あなたの研究が正当に評価され、無事にアクセプトへと進んでいくことを、私たちは全力でサポートしています。
▼エヌ・エイ・アイ株式会社の科学論文サポートサービス
https://www.nai.co.jp/
▼レスポンスレター限界まで代理作成サービス
https://www.nai.co.jp/response-letter/

