「論文を書こうと思っても、どこから手を付ければよいかわからない。」
論文執筆に慣れていない研究者の方から、このようなお悩みを伺うことがあります。
研究データはそろっている。結果も出ている。伝えたいことも頭の中にはある。
それでも、いざWordを開くと、最初の一文がなかなか書けない。
書き始めても途中で構成が変わり、Introductionを書き直し、
Discussionも修正し…という経験をした方も多いのではないでしょうか。
実は、このような状況は珍しいことではありません。
多くの場合、原因は「書く力」ではなく、「設計図」がないことにあります。
実際には、論文を書き始めてから「この結果も入れた方がよいかもしれない」「やはり考察を先に書き直そう」と
修正を繰り返し、気が付けば全体の構成が当初とは大きく変わってしまうことがあります。
その結果、Introductionで提示した研究目的とDiscussionの結論が十分につながらなかったり、
同じ内容を複数のセクションで説明してしまったりするケースも少なくありません。
これは論文執筆に慣れていない研究者だけではなく、経験豊富な研究者でも起こり得ることです。
だからこそ、本文を書き始める前に「論文全体を俯瞰する時間」を設けることが重要になります。
そこでおすすめしたいのが、NAIが2016年のコラムでもご紹介した**「One Synopsis」**という考え方です。 (https://www.nai.co.jp/recommend/column2016.html)
One Synopsisとは?
One Synopsisとは、その名のとおり論文全体をA4用紙1枚にまとめる方法です。
本文を書き始める前に、論文全体の骨子を整理し、「この論文で何を伝えたいのか」を可視化します。
記載する内容は次の5項目です。
・Claim(主張)
・Findings that support the claim(主張を裏付ける研究結果)
・Conclusion(結論)
・Future prospects or visions(今後の展望)
・Specific instructions(投稿規定・文字数・投稿先など)
一見シンプルですが、この5項目を整理するだけで、論文全体の流れが驚くほど明確になります。
例えば、「Claim(主張)」を書く際には、「この論文を一文で説明すると何か」を意識してみましょう。
一方、「Findings that support the claim(主張を裏付ける研究結果)」では、
その主張を支えるデータや実験結果を整理します。
ここで重要なのは、「得られたすべての結果を書く」のではなく、
「主張を支えるために本当に必要な結果は何か」を考えることです。
また、「Future prospects or visions(今後の展望)」まであらかじめ整理しておくことで、
Discussionの方向性も見えやすくなります。
このようにOne Synopsisは、単に項目を埋める作業ではなく、
「論文全体のストーリーを組み立てる作業」と言えるでしょう。
なぜA4一枚なのでしょうか?
One Synopsisで重要なのは、「A4一枚」という制約です。
もしA4一枚に収まりきらない場合は、伝えたい内容が広がりすぎている可能性があります。
逆に、書き出せない項目がある場合は、
主張が曖昧
データが不足している
論理の流れが整理できていない
などの課題が見えてきます。
つまり、One Synopsisは「論文を書くためのメモ」ではなく、「論文の設計図」として機能します。
One Synopsisを作るメリット
① 主張がぶれにくくなる
論文を書き進めるうちに、新しいアイデアや追加データが増え、当初の主張がぼやけてしまうことがあります。
One Synopsisがあれば、執筆中でも「この論文で最も伝えたいこと」に立ち返ることができます。
② IntroductionからDiscussionまで一貫性が生まれる
査読では、
「研究目的と結論が一致していない」
「Discussionが結果から飛躍している」
といった指摘を受けることがあります。
One Synopsisで骨子を整理しておけば、各セクションのつながりを意識しながら執筆できるため、
論理の一貫性を保ちやすくなります。
③ 執筆時間を短縮できる
一見遠回りに思えるかもしれませんが、設計図を作ることは結果的に執筆時間の短縮につながります。
途中で章立てを変更したり、大幅な書き直しをしたりする回数が減るためです。
「書きながら考える」のではなく、「考えてから書く」。
これが効率的な論文執筆の第一歩です。
One Synopsisは査読対応にも役立つ
One Synopsisは、論文を書き始める前だけでなく、査読対応の場面でも役立ちます。
例えば、
「新規性が分かりにくい」
「結論をもう少し明確にしてほしい」
といった査読コメントを受けた場合でも、One Synopsisに戻ることで、
「論文の主張」と「査読者が求めている内容」のずれを整理しやすくなります。
修正方針を決める際のチェックリストとして活用することもできるでしょう。
設計図ができたら、次は「読み手の視点」で確認する
One Synopsisで論文全体の流れが整理できたら、いよいよ本文の執筆です。
しかし、ある程度書き進めると、
論理展開は分かりやすいだろうか。
主張と研究結果は十分に結び付いているだろうか。
第三者が読んでも納得できる構成になっているだろうか。
と不安になることもあるでしょう。
執筆者自身は研究内容をよく理解しているため、「当然伝わる」と思ってしまう部分が、
第三者には分かりにくいこともあります。
論文を書いていると、著者自身は研究内容を熟知しているため、「この流れなら伝わるはず」と感じてしまいます。
しかし、査読者や編集者は、その研究を初めて読む第三者です。
例えば、
- なぜこの実験を行ったのか
- この結果がどのように主張につながるのか
- 既存研究との違いは何か
が十分に説明されていないと、「論理が飛んでいる」「新規性が分かりにくい」といった印象を与えてしまうことがあります。
投稿前に第三者の視点で論文を見直すことは、英語表現の確認だけでなく、研究内容をより分かりやすく伝えるためにも重要な工程です。
だからこそ、完成した原稿は「読み手の視点」で確認することが重要です。
NAIのプレミアム校閲・プレミアムEX校閲
NAIでは、論文投稿を目指す研究者向けに、「プレミアム校閲」および「プレミアムEX校閲」をご提供しています。
プレミアム校閲では、英文の自然さや正確さだけでなく、論理展開や構成にも配慮しながら校閲を行います。
さらに、プレミアムEX校閲では、ジャーナル投稿を見据えた視点から、
論文全体に対するより詳細なコメントや改善提案をご提供しています。
「文法は合っているが、論理が伝わりにくい」
「新規性が十分に伝わっているか不安」
そのような場合にも、客観的な視点から原稿を確認することで、論文の完成度をさらに高めることができます。
論文の完成度を高めるために
研究内容が優れていても、その価値が論文として十分に伝わらなければ、本来得られるはずの評価につながらないことがあります。
だからこそ、本文を書き始める前にOne Synopsisで論文全体の設計図を整理し、完成した原稿は第三者の視点で確認することが大切です。
NAIでは、プレミアム校閲およびプレミアムEX校閲を通じて、英文の自然さや正確さだけでなく、論理展開や構成にも配慮したサポートを行っています。
「論理の流れに違和感はないか」「研究の新規性が十分に伝わっているか」といった点も含め、投稿前の最終確認としてご活用いただけます。
論文執筆は、書き始める前の準備と、投稿前の客観的な確認によって、完成度をさらに高めることができます。
まずはOne Synopsisで論文の設計図を作ることから始めてみてはいかがでしょうか。
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