リード文 「Major Revision」―その通知メールを開いた瞬間、心臓がドクンと跳ねる。コメント欄をスクロールしていくうちに、頭の中ではもう新しい実験計画が立ち上がっていく...。研究者なら誰もが一度は経験する、この“反射的に追加実験モードに入ってしまう瞬間”。でも、ちょっと待ってください。そのコメント、本当に「新しいデータを出してほしい」と言っているのでしょうか? 実は、よく読んでみると“説明が足りないだけ”ということも少なくないのです。本記事では、査読コメントの読み解き方と、賢い査読対応のコツを、現場の声を交えながらお話しします。
査読結果が届いた瞬間、多くの研究者がまず気になるのは査読コメントではないでしょうか。
そして、
「追加実験が必要そうだ……」
と頭を抱えた経験がある方も少なくないと思います。深呼吸をして、コーヒーを淹れて、もう一度コメントを読み直す―そんな夜を過ごした方もきっと多いはずです。
しかし、実際に査読コメントをよく読んでみると、必ずしもすべてが追加実験を求めているわけではありません。
一見「実験要求」に見えて、実はそうでないコメント
例えば、
Why did the authors choose this method?
というコメント。
一見すると、
「別の手法との比較実験が必要なのでは?」
と思うかもしれません。締め切り前の頭で読むと、なおさらそう感じてしまいますよね。
しかし査読者が本当に知りたいのは、
「その手法を選んだ理由を説明してほしい」
だけの場合もあります。
この場合、新たな実験を行わなくても、MethodsやDiscussionに説明を追記することで対応できる可能性があります。「なぜこの手法を選んだのか」「他の選択肢と比較してどんな利点があったのか」を一段落書き加えるだけで、査読者は十分に納得してくれることが多いのです。
実際、査読コメントには追加実験の要求だけでなく、説明不足、考察不足、引用不足、結果の解釈不足などを指摘しているものも数多くあります。もちろん、本当に追加実験が必要なケースもあります。しかし、すべてのコメントを「新しいデータを出さなければならない」と解釈してしまうと、必要以上に時間や労力をかけてしまうことがあります。
重要なのは、査読者が何に疑問を持っているのかを正しく読み取ることです。
ありがちな“早とちり”シーン
NAIのコーディネーターとして日々先生方とお話ししていると、こんなシーンによく出会います。
シーン①「実験室に直行してしまった先生」 査読コメントを見た瞬間、ラボに走って学生さんに「もう一回サンプル取り直そう!」と声をかけた。1か月かけて追加実験を終え、原稿を書き直して再投稿。ところが返ってきた査読者のコメントは「That's fine, but my original concern was about the rationale of your method selection.(追加実験はいいけれど、私が聞きたかったのは手法選択の根拠です)」――。1か月の労力が、たった一段落の説明追加で済んでいたかもしれない、と気づいた瞬間です。
シーン②「全部書き直してしまった先生」 「Discussion should be improved.」というコメントを見て、Discussion全体をゼロから書き直した。しかし査読者が気になっていたのは、特定の段落の論理の飛躍だけだった。結果、新しく書いた部分にまた別の指摘が入り、リバイズが二周してしまった……。
シーン③「短すぎる返信で誤解された先生」 本文はしっかり修正したのに、レスポンスレターには「Thank you. We revised the manuscript.」とだけ書いて返信。査読者から「どこをどう直したのか分からない」と再質問が来て、結局やり取りが長引いてしまった。
どれも“あるある”なのですが、共通しているのは“「コメントの意図を整理する前に動き出してしまった」”という点です。
レスポンスレターは“もう一つの本文”
査読対応というと本文修正ばかりに意識が向きがちですが、実際にはレスポンスレターも査読対応の重要な一部です。むしろ査読者は、本文より先にレスポンスレターを読むことも多いと言われています。
例えば、
「追加実験は実施していないが、既存データから十分説明可能である」
という場合でも、その理由を論理的に説明できれば査読者や編集者に理解してもらえる可能性があります。「なぜ追加実験が不要と判断したのか」「既存データのどの部分がその根拠になるのか」を丁寧に書けば、それは立派な“反論”ではなく“対話”になります。
逆に、本文をしっかり修正していても、
Thank you for your comment. We revised the manuscript.
だけでは、どのような対応をしたのか十分には伝わりません。査読者の疑問に対して、なぜその対応を行ったのかを明確に説明することが重要です。
実際には、
- このコメントは何を求めているのか
- どこまで修正すべきか
- どのように説明すれば納得してもらえるか
で悩まれる研究者も少なくありません。特に英語でのレスポンスレター作成は、本文執筆とは異なる難しさがあります。丁寧すぎても遠慮がちに見えるし、強く反論しすぎると角が立つ――この絶妙なバランスは、英語ネイティブでも悩むところです。
動き出す前に、5分だけ立ち止まる
ここで、査読コメントが届いたときにおすすめしたい“対応手順”をご紹介します。
ステップ1:まずは一晩寝かせる コメントを読んだ直後は、どうしても感情が動きます。「厳しい指摘だ...」と落ち込んだり、「いや、これは誤解だ!」とムッとしたり。判断はその気持ちが落ち着いてから。
ステップ2:コメントを“分類”する すべてのコメントを次の4つに分けてみてください。
- 追加実験が本当に必要なもの
- 説明や考察の追記で対応できるもの
- 引用追加・用語修正で済むもの
- 査読者の誤解に基づくもの(=丁寧な説明で対応)
この分類だけで、対応工数が見える化されます。
ステップ3:共著者・指導教員と意図を擦り合わせる 一人で「これは実験が必要だ」と判断する前に、共著者の意見を聞いてみる。「いや、それはDiscussionに書けば十分でしょう」と冷静なアドバイスをもらえることもあります。
ステップ4:レスポンスレターの骨子を先に書く 本文を直す前に、「査読者に何をどう説明するか」を箇条書きで整理する。これだけで、本文修正の方向性がブレなくなります。
ステップ5:第三者の目を入れる 書き上げたら、必ず誰かに読んでもらう。共著者でも、英文校正サービスでも構いません。「自分には伝わっている」と「査読者に伝わる」は、まったく別物です。
「先に相談してくださっていれば...」というお声
NAIのコーディネーターとして査読対応のご相談を受けていると、
「追加実験や大幅な原稿修正を始める前に相談すればよかった」
「査読コメントの意図を先に整理していれば、不要な修正を避けられたかもしれない」
「レスポンスレターの校閲を先に依頼していれば、無駄な時間を省き、その分を原稿のブラッシュアップや研究そのものに使えたのに」
というお声をいただくことがあります。
こうした先生方のお話を伺うたびに感じるのは、査読対応では**「何を修正するか」を考える前に、「査読者は何を求めているのか」を考えることが重要**だということです。
査読コメントを見た瞬間に追加実験を計画したり、大幅な書き直しに着手したりしたくなる気持ちはよく分かります。締め切りもありますし、何より「早く対応しなきゃ」という焦りが先に立つものです。しかし、査読者が求めているのは新しいデータではなく、説明の補足や論理の整理である場合も少なくありません。もしそうであれば、数週間あるいは数か月を費やす追加実験よりも、適切な説明と説得力のあるレスポンスレターの方が有効なこともあります。
NAIの「レスポンスレター限界まで代理作成サービス」
NAIでは、査読コメントに対する回答作成を支援する**「レスポンスレター限界まで代理作成サービス」**をご提供しています。
査読コメントと修正原稿をもとに、
- 査読者の意図の整理
- 回答案の作成
- 英語表現の調整
- 回答内容の論理構成の確認
などをサポートいたします。
「限界まで代理」という少し変わった名前には、「著者の先生にしかできない判断の手前まで、私たちが全力で並走します」という思いが込められています。
もちろん、研究内容そのものに関する最終判断は著者の先生方にしかできません。しかし、
「この査読コメントは本当に追加実験を求めているのだろうか?」
「この説明で十分伝わるだろうか?」
と悩まれた際には、第三者の視点が役立つこともあります。何百本ものレスポンスレターを見てきたコーディネーターだからこそ気づける“査読者の温度感”や“英語表現の微妙なニュアンス”があるのです。
最後に
査読コメントを見た瞬間に追加実験を検討する前に、まずは査読者が本当に何を求めているのかを考えてみてください。思ったよりもシンプルな修正や説明の追加で対応できるケースがあるかもしれません。
そして、その判断を助けるレスポンスレターもまた、査読対応の重要な武器の一つです。研究の価値を正しく伝えるラスト1マイル――そこを一緒に走るパートナーとして、NAIをぜひ思い出していただけたら嬉しいです。
NAIの「レスポンスレター限界まで代理作成サービス」
