「言語的不公平」を乗り越え、研究の本質で評価されるために

1.はじめに ― 英語そのものではなく、「英語をめぐる印象」が問題になる時代

国際誌への論文投稿において、非英語圏の研究者はしばしば英語表現に関する指摘を受けます。これは、ある意味では避けられないことであり、英語が学術界の共通言語である以上、当然のプロセスとも言えます。

しかし、よく観察してみると、不思議な現象に気づきます。 英語そのものに大きな問題がない場合であっても、必要以上に言語面の改善を求められるケースが、実際に存在するのです。

その背景には、

  • 著者の所属地域(アジア・アフリカ・中東・南米など)
  • 著者の氏名から推測される非英語圏出身性
  • 「非ネイティブだから英語に問題があるはず」という無意識の先入観

といった、研究内容とはまったく無関係な要素が影響していると指摘されています。

つまり、いま非ネイティブ研究者が直面しているのは、「英語ができていないこと」ではなく、「英語ができていないと思われること」という、もう一段階厄介な課題なのです。


2.研究が示す「言語的バイアス」の実態

同じ内容でも、評価が変わってしまう

Politzer-Ahles らによる興味深い研究は、この問題の深刻さを実証的に示しました。

Politzer-Ahles, S., Girolamo, T., & Ghali, S. (2020). Preliminary evidence of linguistic bias in academic reviewing. Journal of English for Academic Purposes, 47, Article 100895.

この研究では、科学的内容が同一の要約文を用いた実験を行い、英語表現の違いが研究品質の評価にどう影響するかを検証しました。その結果、

「非ネイティブらしい英語」と判断された文章は、研究内容そのものの評価まで低く見積もられる可能性がある

ことが示されたのです。

これは小さな問題ではありません。本来、学術の世界で評価されるべきは研究の独創性・厳密性・貢献度であるはずです。それが「英語の響き」によって左右されてしまうとすれば、それは学術コミュニケーションの根幹に関わる深刻な歪みです。

長く議論されてきた「言語的不公平」

英語論文出版における「言語的不公平(linguistic injustice)」という概念は、決して新しいものではありません。Hyland(2016)をはじめとする研究者たちが、長年にわたってこの問題を論じてきました。

Hyland, K. (2016). Academic publishing and the myth of linguistic injustice. Journal of Second Language Writing, 31, 58–69.

Hyland の議論は多面的ですが、その中で重要なのは、

  • 多くの非ネイティブ研究者が、査読や編集過程で言語面に関する不利益を体感している
  • ネイティブ研究者であっても言語面の指摘を受けることはあるが、非ネイティブにはそれが過剰に集中する傾向がある
  • この不公平は、個別の悪意ではなく、構造的な慣習として存在している

という現実です。

もちろん、すべての英語指摘が不当だというわけではありません。正当で建設的な指摘も多く存在します。しかし、英語力とはまったく別の要因によって、非ネイティブ研究者が追加的な負担を強いられることも少なくない―この事実は、いま改めて広く認識されつつあります。


3.「形式的な英語指摘」が研究者から奪うもの

英語をめぐる過剰な指摘は、目に見えにくいかたちで研究者の時間と労力を消耗させます。

奪われるもの具体的な内容
 時間何度も英文を直し、再投稿する手間
コスト追加の英文校閲費用、再投稿費用
集中力本来は次の研究に向かうべき思考が、英語対応に割かれる
モチベーション「また英語ですか」という疲弊感、自信の低下
タイミング査読遅延による、優先権・新規性の損失リスク

これらは、研究そのものとは関係のないところで生じる損失です。だからこそ、「最初の段階で、不要な指摘の芽を摘んでおく」ことに、戦略的な意味が出てくるのです。


4.校閲証明書(Certificate of Editing)という"客観的な盾"

このような状況の中で、有効な補助資料として注目されているのが**校閲証明書(Certificate of Editing)**です。

校閲証明書とは何か

校閲証明書とは、「この原稿が専門の英語校閲サービスを受けた」ことを、第三者である校閲機関が公式に証明する書類です。一般的に以下の情報が記載されます。

  • 校閲を行った機関名・所在地
  • 校閲対象の論文タイトル
  • 著者名
  • 校閲実施日
  • 校閲の種別(カジュアル校正・プレミアム校閲など)
  • 機関の代表者署名・押印

校閲証明書が"できること"と"できないこと"

ここで誤解のないよう明確にしておきたいのは、

校閲証明書そのものが、論文の採否を保証するわけではない

という点です。これは校閲証明書の性質を理解するうえで非常に重要です。

しかし一方で、校閲証明書には以下のような実務的な効力があります。

「すでに英語校閲を受けている」という事実を可視化できる

編集者や査読者に対し、「専門家の手による確認を経た原稿である」ことを、客観的に示すことができます。

形式的・慣習的な英語指摘を回避しやすくなる

「まず英語を見直してください」「英文校閲を受けてから再投稿してください」、こうした、研究内容に踏み込む前の形式的な差し戻しを避ける効果が期待できます。

査読者が研究内容そのものに集中しやすくなる

英語面に対する懸念があらかじめ払拭されることで、査読者の意識は自然と研究の本質的な評価へと向かいやすくなります。

編集部への「説明責任」を果たすツールになる

「英語に問題はないか」と問われた際の、客観的な裏付け資料として機能します。


5.国際誌でも推奨される「英語校閲+証明書」の組み合わせ

実際、多くの国際誌では、英語表現に懸念がある場合に専門校閲サービスの利用校閲証明書の提出を推奨しています。投稿規定や採択前のレター(minor revisionなど)で、

"We recommend that the manuscript be reviewed by a professional English editing service before resubmission. Please provide a certificate of editing."

といった文言を目にすることは珍しくありません。

校閲証明書は、決して絶対的な効力を持つものではありません。しかし、編集部に対する説明責任を果たすための客観的資料として、いまや国際的に広く認知された存在となっています。


6.NAIの校閲証明書サービス ― 全プランで対応

NAI(エヌ・エイ・アイ株式会社)では、すべての校閲サービス、校正サービスにおいて校閲証明書の発行が可能です。

対応サービス一覧

  • 🟢 カジュアル校正
  • 🟢 プレミアム校閲
  • 🟢 プレミアムEX校閲
  • 🟢 類似性削減校閲Ⓡ
  • 🟢 AI依存度低減校閲

発行形式

  • 📄 PDF版の校閲証明書は無料で発行
  • 必要に応じて、紙の証明書発行にも柔軟に対応

これにより、研究者は校閲の種類を問わず、必要なタイミングで証明書を取得できます。


7.こんなニーズにも柔軟に対応

近年、NAIには次のような新しいタイプのご相談が増えています。

「論文の英語には自信があるが、投稿時の保険として校閲証明書だけ取得したい」

自分の英語力に確信がある場合でも、ジャーナルの慣習的な指摘を予防する保険として、校閲証明書を取得したいというニーズです。これは特に、過去に英語面で不本意な指摘を受けた経験のある研究者から多く寄せられます。

「編集部から証明書の提出を求められた」

投稿後、編集部から校閲証明書の提出を明示的に要求されたというケースです。この場合、迅速な対応が査読プロセスのスムーズな進行に直結します。

「再投稿時に、英語の改善を客観的に示したい」

一度差し戻された原稿を再投稿する際に、「言われた通り、専門校閲を受けました」と明確に示すための証拠資料として活用されるケースです。

NAIでは、こうした多様なニーズに柔軟に対応しています。


8.おわりに ― 校閲証明書は「研究を守る盾」

最後に、改めて強調しておきたいことがあります。

校閲証明書は、論文の価値を高めるものではありません。

論文の価値を決めるのは、あくまでも研究そのものの独創性と科学的厳密性です。校閲証明書がそれを底上げすることはありません。

しかし――

校閲証明書は、不要な英語指摘から研究を守る「盾」になります。

研究内容そのものを正当に評価してもらうための環境を整える――これこそが、校閲証明書の本当の役割です。 言語的不公平の壁を少しでも低くし、ご自身の研究の真価を世界に届けるために、ぜひ校閲証明書の活用をご検討ください。

NAIは、研究者一人ひとりの「研究本来の声」が、世界の読者に正しく届くよう、これからも丁寧なサポートを続けてまいります。


参考文献

Hyland, K. (2016). Academic publishing and the myth of linguistic injustice. Journal of Second Language Writing, 31, 58–69. https://doi.org/10.1016/j.jslw.2016.01.005

Politzer-Ahles, S., Girolamo, T., & Ghali, S. (2020). Preliminary evidence of linguistic bias in academic reviewing. Journal of English for Academic Purposes, 47, Article 100895. https://doi.org/10.1016/j.jeap.2020.100895

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