学会発表でポスターを作成するとき、研究内容そのものには十分に時間をかけても、「ポスターのデザイン」については最後にまとめて整える、という方も多いのではないでしょうか。

しかし、ポスター発表では、研究内容が優れているだけでは十分ではありません。

会場には数多くのポスターが並び、多くの研究者が会場内を移動しています。その中で、自分のポスターの前で足を止めてもらい、さらに研究内容を読んでもらうためには、「どこに何が書いてあるのか」が直感的に分かるデザインが重要です。

NAIでは以前、こうした研究ポスターのデザインについて解説したコラム「Making your poster stand out: the role of design」(2017年4月、Editor: C.F)を公開しました。

校閲者・コーディネーターの月替わりのコラム(2017)

NAIの校閲者、コーディネーターの月替わりのコラム(2017)です。論文執筆、投稿過程において、実際の論文投稿の最先端の研究者ならではの「さすが」と目から鱗が落ちるよう…

今回は、このコラムの内容を改めて紹介しながら、研究ポスターを作成するときに意識したいポイントについて考えてみます。


まず重要なのは「タイトル」と「Abstract」

コラムでは、ポスターを目立たせるためのデザインについて、まず次のように述べています。

“Most importantly, the title and abstract should be highly visible”

つまり、タイトルとAbstractを目立つようにすることが最も重要ということです。

具体的なレイアウトについても、

“usually with the title center-aligned at the top of the poster and the abstract left-aligned below the title”

と紹介されています。

タイトルをポスター上部の中央に配置し、その下にAbstractを配置するという、比較的オーソドックスなレイアウトです。

これは単純なデザイン上のルールというだけではありません。

ポスターを見た人は、まずタイトルを見て「何についての研究なのか」を判断します。そして、その研究に興味を持てば、Abstractや図、結果などへ視線を移していきます。

つまり、タイトルはポスターへの「入口」です。

タイトルが小さかったり、背景や他の情報に埋もれていたりすると、せっかく興味深い研究をしていても、その先まで読んでもらえない可能性があります。


研究のポイントを「3~5個」にまとめる

コラムでは、さらに、

“it can also be useful to provide a condensed summary of the topic and key findings (3–5 bullet points)”

という提案もされています。

研究テーマと主要な結果を、3~5個程度の箇条書きにして簡潔にまとめるという方法です。

これは現在の学会ポスターでも非常に使いやすい考え方でしょう。

例えば、ポスターを初めて見る研究者に対して、

  • What was the research question?
  • What methods were used?
  • What were the key findings?
  • What is the significance of the findings?

といった情報が短時間で把握できるようにしておけば、研究の全体像を理解してもらいやすくなります。

特にポスター発表では、最初から本文をすべて読んでもらえるとは限りません。

会場を歩きながらタイトルだけを見る人もいれば、タイトルと図だけを見る人もいます。そのため、研究の重要なポイントを視覚的に拾えるようにしておくことが大切です。

「すべてを読んでもらう」のではなく、「まず重要な部分を見つけてもらう」。

この発想が、ポスター作成では重要なのかもしれません。


「読みやすさ」を左右するコントラスト

デザインというと、写真やイラスト、色などを工夫することをイメージしがちですが、コラムでは非常に基本的なポイントとして、文字と背景のコントラストにも触れています。

“High contrast between the text and background is essential”

つまり、文字と背景のコントラストを十分に確保することが不可欠ということです。

例えば、

“black text on a light background or white text on a dark background”

とあるように、明るい背景には黒などの濃い文字、暗い背景には白などの明るい文字を使用することで、文字を読みやすくできます。

研究ポスターでは、どうしても「少しでも目立たせたい」「おしゃれなデザインにしたい」と考えて、背景に写真や複雑な模様を入れたり、文字色を工夫したりすることがあります。

しかし、目立つことと読みやすいことは同じではありません。

遠くから見たときにはきれいでも、近づいて本文を読もうとすると文字が背景に埋もれてしまう――というデザインでは、研究内容を伝えるという本来の目的から離れてしまいます。


色は「多ければよい」わけではない

コラムでは、色についても興味深いアドバイスがあります。

“The most effective and professional designs tend to use a small number of colors (around 3–4 in total)”

効果的でプロフェッショナルなデザインでは、使用する色を3~4色程度に抑えることが多い、という考え方です。

研究ポスターには、タイトル、見出し、本文、図、グラフ、写真など、多くの要素があります。

そこに赤、青、緑、黄色、紫……と多くの色を使ってしまうと、「どこが重要なのか」が逆に分かりにくくなることがあります。

例えば、

  • メインカラー
  • 見出しなどに使うアクセントカラー
  • 本文の文字色
  • グラフなどで使用する補助色

というように、ある程度ルールを決めておくと、全体に統一感が出ます。


パソコンではきれいなのに、印刷すると違う?

もう一つ、ポスター作成時に忘れがちなのが、画面と印刷物の色の違いです。

コラムでは、

“colors can look significantly lighter or darker on a computer monitor vs. a printed poster”

と注意を促しています。

パソコンの画面ではきれいに見えていた色が、実際に印刷すると想像していたものと違って見えることがあります。

特に学会ポスターは、通常のA4資料とは異なる大きなサイズで印刷することも多いため、「PowerPoint上では問題なかったから大丈夫」と考えず、可能であれば印刷後の見え方も確認しておきたいところです。


「余白」は無駄ではない

ポスター作成では、「せっかく大きな紙を使うのだから、できるだけ情報を詰め込みたい」と考えてしまうことがあります。

しかし、コラムでは、

“allow some empty space between different elements on the poster”

と、異なる要素の間に余白を設けることも推奨しています。

余白があると、一見すると「情報が少ない」ように感じるかもしれません。

しかし実際には、タイトル、本文、図、表などを適切に分けることで、見る人が情報を整理しやすくなります。

ポスターでは、情報量を増やすことだけが重要なのではありません。

情報同士を適切に「離す」ことも、情報を伝えるためのデザインの一部です。


同じ研究室のポスターはデザインを統一する

複数の研究者が同じ研究室や研究グループから学会に参加する場合には、もう一つ面白いアイデアがあります。

コラムでは、

“If your research group will present multiple posters, consider using a standardized design.”

と提案しています。

つまり、研究室や研究グループでポスターのデザインをある程度統一するという方法です。

例えば、

  • 同じロゴを使用する
  • メインカラーを統一する
  • タイトルの位置を統一する
  • 見出しのデザインを統一する

といったルールを作っておけば、同じ研究室のポスターが並んだときに、一つのグループとして認識してもらいやすくなります。

さらに、コラムではPowerPointでポスターテンプレートを作成する方法についても紹介しています。

一度テンプレートを作っておけば、次回以降の学会発表でも活用できます。


「デザイン」だけでなく「英語」もポスターの伝わり方を左右する

ここまで紹介した内容を見ると、「ポスターのデザインさえ整えればよい」と思われるかもしれません。

しかし、実際にはもう一つ重要な要素があります。

それが、ポスターに掲載する英語そのものです。

どれだけ見やすいレイアウトにしても、タイトルや見出しが分かりにくかったり、Abstractが長く複雑だったりすると、研究のポイントが伝わりにくくなります。

特に英語ポスターの場合、限られたスペースの中で研究内容を簡潔に表現する必要があります。

例えば、タイトル一つをとっても、

「研究内容を正確に表現すること」と「短時間で研究者の興味を引くこと」の両方が求められます。

また、本文についても、単に英文法が正しいだけではなく、ポスターとして読みやすい文章になっているかという視点が重要です。

論文本文と同じような長い文章をそのままポスターに掲載すると、情報量が多すぎて読みにくくなることがあります。

そのため、ポスターでは、

「正確な英語」+「簡潔で分かりやすい英語」

の両方を意識することが大切です。


NAIの英文校閲サービスもご活用ください

NAIでは、研究者の皆様を対象に、科学論文を中心とした英文校閲・翻訳サービスを提供しています。

学会発表用のポスターやAbstractについても、英語表現を確認し、研究内容が自然かつ明確に伝わる英文に仕上げるためのサポートをご利用いただけます。

「文法的には間違っていないと思うけれど、英語として自然なのか分からない」

「研究内容をもっと簡潔に伝えたい」

「海外の研究者にも伝わりやすい英語にしたい」

といった場合には、英文校閲を活用するのも一つの方法です。

ポスターは、研究成果を「読む」だけではなく、「見る」「理解する」「興味を持つ」ための媒体です。

だからこそ、研究内容、英語、レイアウトの3つを別々に考えるのではなく、全体として「研究の魅力が伝わるか」を確認することが重要です。


まとめ――良いポスターは「情報を詰め込む」より「伝わるように整理する」

今回紹介した2017年のNAIコラムでは、研究ポスターのデザインについて、タイトルやAbstractの配置、色の使い方、コントラスト、余白、テンプレートなど、現在でも活用できる基本的なポイントが紹介されています。

特に重要なのは、

「目立たせること」と「読みやすくすること」を両立させること。

そして、ポスターに載せる情報をただ増やすのではなく、研究の重要なポイントが短時間で伝わるように整理することです。

学会ポスターを作成するときには、完成したポスターを少し離れた場所から見てみてください。

「タイトルは最初に目に入るか?」

「研究のテーマは数秒で分かるか?」

「重要な結果はすぐに見つけられるか?」

「文字は読みやすいか?」

「情報を詰め込みすぎていないか?」

そして最後に、

「このポスターを初めて見る研究者に、研究の魅力がきちんと伝わるだろうか?」

という視点で確認してみましょう。

2017年に公開されたコラムのアドバイスは、10年近く経った現在でも、研究ポスターを作成する際の基本として十分に活用できるものです。

次の学会でポスター発表を予定されている方は、ぜひ「研究内容」だけでなく、「どう見せるか」「どう伝えるか」という視点から、ポスターを見直してみてはいかがでしょうか。