「Original ArticleをLetterにしてください」と言われたら?
〜フォーマット変更だけでは済まないことも〜
論文投稿後、メールボックスに編集部からの返信が届く。緊張しながら開くと、Rejectでもなく、Major / Minor Revisionでもない、ちょっと変わった文面が書かれていることがあります。
「内容には興味があるが、Original ArticleではなくLetterとして投稿してはどうか」
あるいは、
「姉妹誌のLetter形式での投稿を検討してください」
研究内容そのものは評価してくれているらしい。完全な不採用ではない。でも、提示された道は「いまの原稿のまま」ではない...。
このコメントを受けた瞬間、多くの研究者がまず考えるのは、こうではないでしょうか。
「ワード数を削って、図を減らせば、なんとかなりそうだ」
気持ちはよくわかります。査読を通り抜けた疲労感の中で、追加実験を要求されるよりはずっとマシに見えるからです。
ただ、ここがひとつ目の落とし穴です。Original ArticleからLetterへの変更は、書式調整だけで済むことのほうがむしろ少ない、というのが実態です。
まず、なぜ編集部はLetter化を提案してくるのか
判断の前に、相手側の意図を読むことから始めると、対応がぐっと楽になります。
編集者がLetter化を勧めてくる背景には、だいたい次のどれかがあります。
- 新規性は十分だが、内容のスケールが本誌のFull paper枠に届かない—だから短報形式で出しましょう、という提案
- 結果のインパクトが強く、速報性を優先したい——Letter(Rapid Communication)はそもそも速報のための枠なので、そちらに乗せ替える発想
- ページ枠の事情——本誌のOriginalスロットが埋まっており、姉妹誌や短報枠なら入れられる
- 査読者の評価が割れた——一部の査読者が「データが薄い」と判断したため、フォーマットを軽くしてバランスを取る、編集部側の落としどころ
この4つは、研究者側にとっての意味合いがまったく違います。
- 「スケール不足」型なら、Letter化はやや消極的な救済策。Discussionや追加実験で深めたほうが本来は望ましい。
- 「速報性重視」型なら、Letter化はむしろ歓迎すべき提案。引用される速度が早くなる可能性がある。
- 「ページ枠」型なら、純粋に編集部の都合なので、姉妹誌のIFを確認したうえでドライに判断してよい。
- 「査読の落としどころ」型は、いちばん慎重に。Letter化を受け入れるか、別誌に出し直すかで、論文のキャリアが分かれます。
提案を受け取ったら、まずは**「これはどのタイプの提案か」**を読み解くこと。ここを読み違えると、その後の対応がすべてズレていきます。
Letterになると、具体的に何が変わるのか
ジャーナルによって規定は異なりますが、一般的にLetterはOriginal Articleと比べて、かなり強い制限がかかります。
- ワード数が半分以下になる(典型的には1,500〜3,500 words前後)
- 図表数が制限される(Figure + Table合計で3〜4点まで、というジャーナルが多い)
- Abstractが不要、もしくは大幅に短縮される
- 参考文献数に上限(20〜40本程度に絞られることがある)
- MethodsやDiscussionをSupplementaryに回すことが求められる
- セクション構成そのものが変わる(IMRaDではなく、連続した本文形式になることも)
ここで「文字数を削るだけだ」と思って取り掛かると、まず確実に行き詰まります。Letterは、Original Articleを短くしたものではなく、別のフォーマットの文書だからです。
短編小説が長編小説の縮約ではないのと、構造的にはよく似ています。
実際には「論文の再編集」に近いことが多い
特に厄介なのが、研究内容はそのままなのに、掲載形式だけが変わるケースです。
ワード数の制約のなかで、こんな判断が次々と必要になります。
- どの結果を残し、どの結果をSupplementary送りにするか
- 図表を何枚に絞るか。統合パネル化(Figure 1A〜D)で対応するか
- Discussionのどの論点を残し、どれを1〜2文に圧縮するか
- 限られた文字数で、研究の意義と新規性をどう伝えるか
- 査読者から指摘された改善点を、短縮版でどう反映するか
- 共著者全員が納得する新しいストーリーラインをどう作るか
これは、もはやフォーマット変更ではありません。論文全体の再編集です。
私たちコーディネーターのもとにご相談いただく案件でも、
「フォーマット変更だけのつもりだったが、思ったより作業量が大きくなった」
というお声は珍しくありません。最初の見積もりが甘く、〆切ぎりぎりになって慌てて持ち込まれる、というパターンも少なくないのが正直なところです。
Letter化は、ストーリーを作り直す作業
ここでひとつ、見方を変える提案をさせてください。
Letter化を「削る作業」と捉えると、苦しくなります。書いた文章を捨てる作業は、研究者にとってかなりのストレスです。
そうではなく、
「同じデータから、別のストーリーを作り直す」
と捉え直すと、作業の見え方が変わります。
Original Articleの語りが「A→B→Cという背景があり、こういう実験をして、こういう結果が出て、こう解釈できる」だとすると、Letterの語りは、
- 結論を先に出す
- もっとも強い結果(多くの場合、Figure 1)を中心に据える
- それを補強する最小限のデータだけを残す
- 細かい議論はSupplementaryに譲り、本文では**「だから何が新しいのか」だけを語る**
という構造になります。
Original Articleが論証文だとすれば、Letterはプレゼンのキースライドです。情報を減らすのではなく、焦点を絞る作業です。この発想で取り組むと、文字数の壁が、急に意味のある制約に変わります。
共著者・指導教員との合意形成という、見えない落とし穴
Letter化の作業では、技術的な編集よりも人間関係のほうが消耗する、というケースが意外と多いです。
たとえば、
- 共著者Aが入れたがっていた追加実験のFigureを落とす必要が出る
- 共著者Bが力を入れて書いたDiscussionの大部分を削ることになる
- 指導教員が「Original Articleで出したい」と言っており、Letter化に難色を示す
- 学生筆頭著者にとっては、論文タイプが業績評価上どう扱われるかが死活問題
データに何の問題もなくても、ここで合意が崩れると、原稿は1ヶ月単位で止まります。
実務的なコツとしては、
- 編集部の提案メールを共著者全員に早めに共有する
- Letter化した場合・別誌に出し直した場合の両シナリオを並べて提示する
- 削る候補のFigure・段落を明示してから議論する(抽象的に「削りましょう」だと揉める)
- 投稿タイプによる引用されやすさ・キャリア評価の違いを、客観的な情報として共有する
このあたりを整理して持っていくと、合意形成がぐっと早くなります。
Letter化に伴って、書き直しが必要になる「付帯文書」
もうひとつ、忘れがちな論点があります。
論文本体だけでなく、付帯する書類もすべて書き直しが発生するということです。
- Cover Letter:Letterとして投稿する理由、速報性、新規性を強調する文面に
- Response to Reviewers(あれば):Letter化に伴って削った部分は、どう査読コメントに対応したのか整理が必要
- Highlights / Significance Statement:文字数制限がさらに厳しくなる
- Graphical Abstract:Letterでは不要だったり、別形式が要求されることがある
- Author Contributions / COI / Funding:投稿システム側の入力フォームが変わるため、再入力が発生
「本文は終わったのに、最後の最後で投稿システムでつまずく」というのは、Letter変更案件の定番です。本文と同じくらいの時間を、付帯書類にも見積もっておくのが安全です。
すべてが大掛かりな作業になるわけではない
ここまでLetter化の重さを強調してきましたが、一方で、投稿先変更が必ずしも大変な作業になるとは限らないことも、フェアにお伝えしておきます。
例えば次のようなケースでは、大幅な内容変更を伴わずに対応できることもあります。
- 姉妹誌へのトランスファー(編集部が原稿ごと移送してくれるパターン)
- 参考文献形式の変更(NumberedとAuthor-Year、Vancouver / APA / Nature / Cellなどの間の変換)
- Figure legendの調整
- タイトルページの変更(著者所属、Corresponding Authorの記載順)
- 投稿規定に合わせた体裁修正(マージン、行番号、Double spacingの有無)
このような場合は、必要な箇所を効率よく整えることで、負担を抑えながら新しい投稿先に対応できる可能性があります。
要するに、「投稿先変更」と一口に言っても、実質作業量はゼロに近いものから、論文の全面再構成まで幅があるということです。最初にどちらのタイプかを見極めることが、その後のスケジュールと費用感を大きく左右します。
フォーマット調整-極みで対応できるケースも
NAIでは、ジャーナルの投稿規定に合わせて原稿を整える「フォーマット調整-極み」をご用意しています。
投稿先変更にともなう作業の中で、
- Reference形式の変更
- セクション構成の調整
- 図表やファイルの整理
- 投稿規定への適合確認
- 行番号、文字数カウント、書式テンプレートへの流し込み
といった「形式」に属する部分は、フォーマット調整-極みで対応できるケースがあります。
ただし、Original ArticleをLetterへ変更する際に、
- 本文の大幅な再構成
- どのデータを残しどれを落とすかの取捨選択
- ストーリー全体の再設計
が必要になる場合は、単なるフォーマット調整の範囲を超えてきます。このときは、専門分野に通じた英文校正・編集サポートとセットで進めるほうが、結果的に短い時間で仕上がります。
判断に迷ったら、まずはご相談ください
「これはフォーマット変更だけで対応できるのか」 「論文の再構成が必要なのか」
これは、実際に原稿と投稿規定を並べて確認してみないと、正確には判断が難しいことが多いです。投稿規定の数行の文言の裏に、思いがけない作業量が隠れていることもあります。
だからこそ、編集部からLetter化や姉妹誌投稿の提案を受け取ったら、早めに状況を整理するのがおすすめです。返事に与えられる期日は短いことが多く、共著者調整も含めると、思っているより時間に余裕がありません。
—せっかく査読を経て磨き上げてきた研究成果です。新しい投稿先でも、その価値が誤解なく伝わる形にしたい。NAIではそうした想いから、研究内容・投稿先・スケジュール・ご予算をうかがったうえで、状況に応じた最適なサポートをご提案しています。
投稿先変更やLetter形式への変更をご検討の際は、お気軽にご相談ください。原稿と投稿規定を拝見できれば、「これは形式調整で済む案件か、再編集が必要な案件か」を早い段階で見立てて、その先のロードマップをお伝えします。
エヌ・エイ・アイ株式会社のフォーマット調整-極(きわみ)なら
https://www.nai.co.jp/formatting-kiwami/
エヌ・エイ・アイ株式会社の論文サポートなら
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