論文をジャーナルに投稿。

「これで一段落!」

……と思ったのも束の間。

数週間後。

「まだ連絡がない……。」

さらに数週間。

「そろそろ査読結果が来てもいいのでは?」

そして、投稿から2か月、3か月……。

「もしかして、論文がどこかで止まっているのでは?」

「査読者が見つかっていない?」

「編集部に問い合わせてもいいのかな?」

この「いつまで待てばいいの問題」は、論文投稿後に多くの研究者が経験する悩みの一つです。

では、実際にはどのくらい待ってから編集部に問い合わせるのが適切なのでしょうか?

結論から言うと、

「投稿から○週間経ったら必ず問い合わせる」という世界共通のルールはありません。

しかし、研究者を対象にした調査や出版倫理に関するガイドラインを見ると、ある程度の目安を考えることはできます。

「12.9週間」が一つの参考になる?

まず、興味深い研究があります。

PLOS ONEに掲載された「How Long Is Too Long in Contemporary Peer Review?」では、査読期間について研究者にアンケート調査を行っています。

この研究では、査読状況が「in review」の状態で、まだ決定が出ていない場合に、研究者が編集者・ジャーナルに初めて問い合わせるまでの期間についても調べています。

その結果、

平均12.9週間(±7.5週間)

待ってから最初の問い合わせをしていたことが報告されています。

12.9週間というと、約3か月です。

つまり、研究者の実際の行動としては、

「数週間返事がないからすぐ問い合わせる」

というより、

「ある程度待って、それでも進捗がない場合に問い合わせる」

というケースが多いと考えられます。

ただし、ここで注意したいことがあります。

これは、

「3か月待たないと問い合わせてはいけない」

という意味ではありません。

あくまで、その研究に参加した研究者が実際に最初の問い合わせを行った時期の平均です。

「平均3か月」でも、ジャーナルによって全然違う

そもそも、査読期間にはかなり大きなばらつきがあります。

2021年に発表された生物医学系ジャーナルのシステマティックレビューでは、69件の研究を対象に、投稿から出版までの期間を調査しています。

その結果、投稿から出版までの平均期間は91~639日、中央値は70~558日と、ジャーナルによって非常に大きな差がありました。

「70日」と「558日」。

同じ「論文投稿」でも、これだけ違います。

ですから、

「2か月経ったから遅い」

「「3か月経ったから催促していい」」

と、投稿日だけを基準に判断するのは危険です。

重要なのは、

そのジャーナルでは通常どのくらいの期間がかかっているのか

です。

まず確認したいのは「ジャーナルが公表している期間」

最近のジャーナルでは、

  • Time to first decision
  • First decision
  • Average review time
  • Submission to first decision
  • Submission to acceptance

などの情報を公開している場合があります。

例えば、

First decision: 30 days

とジャーナルが示しているのであれば、投稿後30日程度という数字が一つの基準になります。

もちろん、これは「30日を超えたら必ず催促」という意味ではありません。

査読者の選定、査読の依頼、査読者からの返答、編集者による判断など、さまざまな工程があるからです。

しかし、

ジャーナルが公表している目安を大きく超えている

のであれば、問い合わせを検討する十分な理由になります。

実際、COPE(Committee on Publication Ethics)の出版に関する透明性・ベストプラクティスの原則でも、ジャーナルが査読期間について示す場合、その情報は実際の出版実績などに基づくべきであり、遅延が生じた場合には著者にその理由を知らせることが望ましいとされています。

つまり、

「待つかどうか」は投稿日だけではなく、そのジャーナルの通常のスケジュールと比較して考える

のが基本です。

では、実際には何週間くらい?

ここまでを踏まえると、ざっくり次のように考えると分かりやすいでしょう。

投稿から数週間

まずは待つ。

特にジャーナルが示している通常のFirst Decisionまでの期間内であれば、慌てて問い合わせる必要はありません。

ジャーナル公表の目安を超えた

問い合わせを検討してよいタイミング。

例えば、ジャーナルがFirst Decisionまで平均4週間としているのに、8週間経ってもステータスが変わらない。

この場合は、

「まだでしょうか?」

と催促するというより、

「現在のステータスをご確認いただけますでしょうか」

という丁寧な問い合わせをしてもよいでしょう。

2~3か月以上経過

ジャーナルの通常期間によりますが、かなり気になってくる時期です。

先ほど紹介した研究では、研究者が最初に編集部へ問い合わせるまでの期間は平均12.9週間でした。

そのため、特にジャーナルが公表している期間を大幅に超えているのであれば、

一度、編集部に状況確認をする

という選択肢は十分に考えられます。

「Under Review」なら、まだ待ったほうがいい?

ここも研究者が迷いやすいところです。

投稿システムを見ると、

Under Review

と表示されている。

「もう査読が始まっているなら、そろそろ終わるのでは?」

と思ってしまいます。

しかし、「Under Review」というステータスだけでは、具体的にどこまで進んでいるのか分からない場合があります。

査読者を探しているのか。

査読依頼が送られているのか。

査読者がレビュー中なのか。

必要な査読が集まっているのか。

編集者が最終判断をしているのか。

ジャーナルによってステータスの意味や表示方法も異なります。

そのため、

「Under Reviewになって○週間だから必ず問い合わせる」

という単純な判断はできません。

むしろ、

ジャーナルが公表している査読期間+現在のステータス

を合わせて判断するのがおすすめです。

「問い合わせたら、編集者に嫌われない?」

そして、もう一つよくある心配。

「編集部に催促したら、論文の心証が悪くならない?」

という問題です。

もちろん、何度も、

「まだですか?」

「いつ結果が出ますか?」

「早くしてください。」

と繰り返すのはおすすめできません。

しかし、

適切なタイミングで、丁寧に状況を確認すること自体は、特別おかしなことではありません。

むしろ、長期間まったく動きがない場合には、編集部に問い合わせることで状況を確認できる可能性があります。

特に、

  • ジャーナルが示している査読期間を大幅に超えている
  • 投稿システムのステータスが長期間まったく変わらない
  • 投稿後、受領確認すら届いていない
  • 学位取得、研究費、就職・昇進などの明確な期限がある
  • 査読期間について編集部から説明がない

といったケースでは、状況確認を検討してよいでしょう。

「催促」ではなく「Inquiry」と考える

ここで、メールを書くときに意識したいポイントがあります。

日本語では、

「催促メール」

と考えてしまいがちです。

しかし、英語では、

Inquiry regarding manuscript status

つまり、

「論文の現在の状況についての問い合わせ」

と考えたほうがよいでしょう。

目的は、

編集者を急かすことではありません。

知りたいのは、

「現在、論文がどのような状況にあるのか」

です。

そのため、

Could you please let us know the current status of our manuscript?

のように、現在のステータスを丁寧に確認する表現が使われます。

さらに、

We would appreciate any update you could provide regarding the review process.

のように、

「査読状況について何か情報をいただければ幸いです」

という柔らかい表現にすることもできます。

実は「何を書けばいいか」が難しい

ところが、この問い合わせメール。

短いから簡単そうに見えて、実際に書こうとすると意外と難しいのです。

例えば、

「3か月も待っています!」

と書くのは簡単です。

しかし、それをそのまま英語にすると、

「早くしてください」というプレッシャーの強い文章

になってしまう可能性があります。

一方、

「お忙しいところ恐縮ですが……」

と日本語で丁寧に書きすぎると、英語では冗長になってしまうこともあります。

編集部が知りたいのは、

  • 論文タイトル
  • Manuscript ID
  • 投稿日
  • 現在のステータス
  • 何を確認したいのか

です。

だからこそ、問い合わせメールは、

「丁寧だけれど、短い」

ことが重要です。

NAIなら「問い合わせレター」も作成できます

ここで、NAIのサービスをご紹介します。

NAIでは、論文そのものの英文校閲だけではなく、

ジャーナル編集者へのレター/メール文の新規作成

も行っています。

例えば、

「投稿して3か月経ったけれど、まだ査読結果が来ない」

という場合。

「このジャーナルには問い合わせていい?」

「どんな文章にすれば失礼にならない?」

「どのくらい強く書けばいい?」

「英語ではどう表現する?」

と悩む必要はありません。

NAIでは、投稿後に長期間連絡がない場合の**「査読状況問合せレター/メール」**を、お客様の状況に合わせて作成しています。

また、NAIのレター/メール新規作成サービスでは、査読状況の問い合わせだけでなく、

  • 投稿前の問い合わせ(Presubmission Inquiry)
  • 再投稿期限の延長依頼
  • 論文の取り下げ・差し替え依頼
  • アクセプト後の問い合わせ
  • その他、ジャーナル編集者への問い合わせ

などにも対応しています。

つまり、

「論文を書いた後、ジャーナルと英語でやり取りするのが苦手」

という方にもご利用いただけます。

「3か月待つ」が正解ではありません

最後に、この記事で一番お伝えしたいことがあります。

論文投稿後の問い合わせについて、

「3か月待てばOK」

という単純なルールがあるわけではありません。

実際、査読期間はジャーナルによって大きく異なります。

生物医学系ジャーナルを対象としたシステマティックレビューでも、投稿から出版までの期間には非常に大きな幅が確認されています。

また、研究者への調査では、最初の問い合わせまで平均12.9週間だったというデータがあります。

したがって、基本は、

① ジャーナルの査読期間を確認する

② 投稿システムのステータスを確認する

③ 公表されている目安を大幅に超えているか確認する

④ 必要であれば、丁寧に問い合わせる

という流れがおすすめです。

そして、

「問い合わせたほうがよさそうだけど、英文メールを書くのが不安」

というときは、無理に一人で悩む必要はありません。

論文のタイトル、Manuscript ID、投稿日、現在のステータスなどをお知らせいただければ、

NAIがジャーナル編集者への問い合わせレター/メールを作成します。

「催促したら失礼かな?」

「もう少し待ったほうがいい?」

「この英文で大丈夫?」

そんなときも、まずはNAIにご相談ください。

論文を投稿した後も、ジャーナルとのやり取りは続きます。

NAIは、論文そのものだけでなく、「投稿後の英語コミュニケーション」までサポートします。

レター/メール文新規作成

ジャーナル編集者・査読者宛に、投稿に関する様々な疑問・質問等、問題解決を図るため、ご要望に添ったレター/メールの作成サポートするサービスです。

参考文献

Nguyen, V. M., Haddaway, N. R., Gutowsky, L. F., Wilson, A. D., Gallagher, A. J., Donaldson, M. R., Hammerschlag, N., & Cooke, S. J. (2015). How long is too long in contemporary peer review? Perspectives from authors publishing in conservation biology journals. PloS one10(8), e0132557. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0132557

Andersen, M. Z., Fonnes, S., & Rosenberg, J. (2021). Time from submission to publication varied widely for biomedical journals: a systematic review. Current medical research and opinion37(6), 985–993. https://doi.org/10.1080/03007995.2021.1905622