ChatGPTなどの生成AIに英文を入力して、「文法をチェックしてください」と頼んだことはありませんか?

スペルや文法上の誤りを確認するだけなら、生成AIは非常に便利です。しかし、論文の英文チェックでは、単に「正しい/間違っている」を判定するだけでは済まない場面があります。

重要なのは、どこは文法だけ直せばよいのか、どこは読みやすさまで改善してよいのか、逆にどこは研究上の意味を動かさないために最小限の修正にとどめるべきなのか、という点です。

生成AIを使う場合、この「どこまで直してよいか」をプロンプトである程度指定できます。一方、人による英文校閲では、原稿を読みながら、必要な修正範囲そのものを校閲者が判断します。今回は、この「修正の指示」と「判断」の違いを、論文の文法チェックという身近な場面から考えてみます。

「文法チェック」と「英文をよくする」は同じではない

たとえば、ChatGPTに「以下の英文の文法をチェックしてください」と指示したとします。

目的が明らかな文法上の誤りだけを確認することであれば、この指示は少し曖昧です。生成AIは、文法上の誤りだけでなく、より自然だと判断した表現への言い換えや文章の整理まで提案することがあります。

文法だけを確認したいのであれば、次のように修正範囲を指定したほうが良い場合があります。

文法上の誤りのみを修正してください。意味、語彙、文体、文章構成、主張の強さは変更しないでください。

同じ「英文チェック」でも、指示によって範囲が変わる

一方、論文を書いていると、文法だけでなく「英語として少し不自然なので直したい」という場合もあります。さらに、文章全体を学術論文として読みやすくしたいこともあります。

つまり、同じ「英文をチェックしてほしい」という依頼でも、AIに任せている仕事は同じではありません。

原稿全体に同じ指示を出してよい?

ここで、まとまった文章や原稿全体を一度にチェックさせる場合を考えてみます。

たとえば、Methods、Results、Discussionを含む文章をまとめて入力し、「文法をチェックし、不自然な表現を自然で簡潔な学術英語に修正してください」と指示したとします。

このプロンプト自体は不自然ではありません。しかし、入力した文章の中には、文法だけ直せばよい文、文法的には正しいもののかなり読みにくく整理した方がよい文、大きく書き換えると研究上の意味が変わりそうな文が混在している可能性があります。

論文では、すべての文を同じ程度に「自然に」「簡潔に」することが最適とは限りません。Resultsでは観察結果をできるだけそのまま示したい一方、Discussionでは論理関係を明確にするために文章構造を整理した方がよい場合があります。Methodsでは、簡潔さよりも実験条件や手順を正確に残すことが優先されることもあります。

どこまで書き換えてよいかは、文ごとに違う

たとえば、Resultsに次の英文があったとします。

A significant increase was observed in the treatment group.  (元の記述)

The treatment group showed a significant increase.  (意味を大きく変えず、より直接的にした例)

The treatment significantly increased X.  (因果的なニュアンスが強まる可能性がある例)

最初の2文は、「治療群で有意な増加が観察された」という結果を示すという点で、大きな意味の違いはありません。

しかし、3つ目の文では「treatmentがXを増加させた」と、treatmentを作用主体として表現しています。文章は短く直接的になっていますが、結果の示し方や因果関係のニュアンスまで変わる可能性があります。

ここで重要なのは、「AIがこのような誤りをする」ということではありません。どこまで書き換えてよいかは、その文の内容と論文内での役割によって異なる、ということです。

AIへの「指示」と英文校閲者の「判断」

生成AIでも、Resultsでは最小限の修正にする、Methodsでは条件を省略しない、Discussionでは論理的な読みやすさも改善する、といった細かな条件をプロンプトで指定できます。

ただし、その場合、「どの部分にどのような修正方針を適用すべきか」を、利用者側であらかじめ考える必要があります。慣れないうちは、何度もやり直しが発生し、もどかしさを感じる場合があります。

一方、人による英文校閲では、校閲者が原稿を読みながら、ある文では冠詞だけを直し、ある文では語順を変え、ある文では一文を二文に分け、文法的にも内容的にも問題がない文はあえて変更しない、といった判断を行います。

つまり、両者の違いは「AIは間違える、人は間違えない」という単純なものではありません。むしろ、「どのように直すか」だけでなく、「この原稿のどこを、どこまで直す必要があるのか」を判断する工程を誰が担うのか、という違いがあります。

AIを使うなら「何を変えてはいけないか」も伝える

生成AIで論文英文をチェックする場合には、してほしいことだけでなく、してほしくないことも指定すると、より思い通りの内容が得られるケースが多いです。

たとえば、原文にない情報を追加しない、因果関係を変更しない、数値や統計的な解釈を変更しない、専門用語を勝手に置き換えない、といった条件です。

こうした指示を加えることで、AIがどこまで文章に手を入れてよいのかを限定しやすくなります。ただし、プロンプトで条件を指定しても、出力された修正が研究内容に照らして適切かどうかは最終的に確認する必要があります。

AIと英文校閲、目的に合わせて使い分ける

生成AIによる英文チェックは、投稿前の下準備として便利に活用できます。明らかな文法ミスを確認したり、自分で書いた英文の不自然な箇所を探したりする用途には使いやすいでしょう。

その際、「文法チェックしてください」だけで終わらせず、何を修正してよいのか、何を変更してはいけないのかまで指定することで、依頼内容はより明確になります。

一方で、原稿全体を見ながら「この文はどこまで直してよいか」「どの表現に修正が必要か」を判断してもらいたい場合は、専門家による英文校閲という選択肢があります。

NAIのカジュアル校正では、文法や語法、不自然な表現などを確認しながら、原文の意味や主張をできるだけ変えない範囲で英文を整えます。AIのように一律の指示で文章全体を処理するのではなく、プロの校閲者が各英文を確認しながら、必要な箇所に必要な修正を行います。

AIか人かを二者択一で考える必要はありません。AIで基本的な英文チェックを行い、必要に応じて専門家による英文校閲を利用する。論文の完成段階や、どこまで確認したいのかに応じて使い分けることが大切です。

※生成AIの出力は、使用するモデル、設定、入力内容、プロンプトによって変わります。AIによる修正は、採用前に必ず研究内容と照らして確認してください。

英文校正・英文校閲

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