「投稿先を変更して再投稿しよう。」
リジェクト通知を受け取ったあと、多くの研究者が最初に口にする言葉ではないでしょうか。落胆する間もなく、次の投稿先を探し始める——これは研究者にとって、ある種の日常的なプロセスと言えるかもしれません。
査読コメントが丁寧に付いている場合には、その内容を参考にしながら論文を修正し、より完成度の高い形で次のジャーナルに挑むことができます。一方で、査読に回る前段階でDesk Rejectとなってしまうケースも少なくありません。この場合、論文内容そのものを大きく変える必要はなく、新たな投稿先に対して速やかに再投稿することも一般的です。
しかし、どちらのパターンであっても、新しいジャーナルへ投稿する際には必ず避けて通れない作業があります。それが、投稿規定に合わせたフォーマット調整です。
「研究内容は変わらないのだから、投稿先を変更するだけの単純作業だろう」——そう考えて準備を始めたものの、参考文献の書式変更、図表の形式、Abstractの文字数、Cover Letterの作成など、予想以上に細かな作業が次々と積み重なり、「思っていたより時間がかかった」という経験をされた方も多いのではないでしょうか。
実際、私たちもお客様から、「論文の修正より、投稿規定への対応の方が大変だった」というお話を伺うことが少なくありません。
投稿先が変われば、「完成した論文」ではなくなる
再投稿の場合、査読コメントへの対応が終われば、論文そのものは完成に近づいたと感じられるはずです。修正すべき点が明確に示されており、それに応えれば良いからです。
しかし、投稿先が変わると話はまったく別になります。ジャーナルごとに投稿規定が異なるため、新しい投稿先に合わせて原稿を作り直す必要が生じるのです。
内容は同じであっても、見直さなければならない項目は多岐にわたります。タイトルページの構成、参考文献のスタイル、FigureやTableの提出形式、Abstractの構造や文字数、Cover Letterの内容——これらすべてを新しいジャーナルの規定に沿って調整しなければなりません。
一つひとつの作業自体はそれほど大きな時間を要しないかもしれません。しかし、投稿規程に細かな指示が並んでいる場合には、それらを一つずつ丁寧に対応していくうちに、想像以上の時間が消費されていくのです。
一番時間がかかる、参考文献の修正
投稿先変更において最も負担になりやすいのが、参考文献(References)およびIn-text citationの調整です。
例えば、著者名の表記方法一つを取っても、ジャーナルによって「姓, イニシャル」の順で書くのか、「イニシャル 姓」の順で書くのか、著者が何名までを列挙しどこから「et al.」で省略するのかが異なります。
さらに、雑誌名を正式名称で書くのか略記で書くのか、その略記もどの基準に従うのか。DOIを記載するかどうか、記載する場合の書式はどうするか。引用番号方式(Vancouver style)を採用しているのか、それとも著者名・年号方式(Harvard style、APA style)なのか。イタリック体の適用範囲、コンマやピリオド、コロンといった句読点の位置に至るまで、細部にわたって違いが存在します。
In-text citationについても同様で、括弧の種類、上付き文字にするかどうか、複数引用時の区切り方など、確認すべき点は数多くあります。
EndNoteやMendeley、Zoteroといった文献管理ソフトを利用していても、すべてのジャーナルスタイルに完璧に対応できるわけではありません。最終的には目視で一件ずつ確認し、必要に応じて手作業で修正するケースも少なくないのです。
引用文献が100件を超えるような論文の場合、この確認・修正作業だけでも相当な時間を要します。研究者にとっては、研究の本質とは離れた地味で神経を使う作業が延々と続くことになります。
FigureやTableも、意外と手がかかる
図表についても、投稿先によって求められる形式はさまざまです。
本文内の適切な位置に配置するのか、それとも別ファイルとして提出するのか。ファイル形式はTIFF形式が指定されているのか、EPS形式なのか、あるいはPDFやJPEGでも許容されるのか。解像度についても、線画は1200 dpi以上、カラー写真は300 dpi以上といった具体的な基準が定められている場合があります。
さらに、Figure Legendを図の下に配置するのか、別のページにまとめるのか。Tableの罫線の使い方、フォントサイズ、単位表記の位置なども、ジャーナルごとに異なる規定が存在します。
研究成果そのものとは関係のない作業ではありますが、投稿準備においては見逃せないポイントであり、規定に沿っていないという理由だけで再提出を求められることも珍しくありません。
Abstractも「そのまま使える」とは限らない
Abstractもまた、投稿先変更に伴って調整が必要になる要素の一つです。
まず、単語数制限が異なります。250語以内のジャーナルもあれば、300語、あるいは150語程度に厳しく制限しているジャーナルもあります。この文字数制限に合わせて、内容を圧縮したり、逆に少し肉付けしたりする作業が必要です。
また、Structured Abstract(Background, Methods, Results, Conclusionsといった見出しに沿って構造化されたAbstract)を要求するジャーナルと、Unstructured Abstract(見出しなしで一続きの文章)を要求するジャーナルがあります。この構造の違いに応じて、文章そのものを組み立て直す必要が生じます。
近年では、Graphical Abstract(視覚的にAbstractを表現した図)の提出を求めるジャーナルも増えており、こうした追加要素にも対応しなければなりません。
「本文はそのままで大丈夫」と思っていても、Abstractだけは新しく作り直すことになる——そうしたケースは実に多く発生しています。
Cover Letterや投稿書類も忘れてはいけない
再投稿では、論文本文以外の提出書類にも十分な注意が必要です。
Cover Letter、Conflict of Interest Statement、Author Contribution Statement、Ethics Statement、Data Availability Statementなど、必要書類は投稿先によって大きく異なります。ジャーナルによっては独自のテンプレートが用意されていることもあり、そのフォーマットに従って情報を整理し直す必要があります。
特にCover Letterは、新しい投稿先に合わせた内容へ変更することが不可欠です。編集長への宛名、そのジャーナルにこの論文が適している理由、論文の新規性やインパクトの強調ポイント——これらはすべて、投稿先ごとに書き換えるべき要素です。
意外と多いのが、前回投稿したジャーナル名がそのままCover Letter内に残ってしまうというミスです。これは編集者に対して非常に印象の悪い誤りであり、時にはそれだけで論文の信頼性を疑われかねません。細かな点ではありますが、投稿前には必ず全体を通して確認する必要があります。
一番時間がかかるのは、実は「確認作業」
多くの研究者が意外に感じるのは、フォーマットを変更する作業そのものよりも、「このジャーナルでは何が求められているのか」を投稿規程で確認する時間の方が長くなるという点です。
Author Guidelinesを最初から最後まで丁寧に読み込み、文字数、図表数、参考文献数、キーワード数、ファイル形式、命名規則、投稿システムでの入力項目など、確認すべきポイントを一つずつリストアップしていく——この地道な作業に予想以上の時間が費やされます。
しかも、投稿規程は一度読んだだけでは把握しきれないほど情報量が多く、投稿作業を進める中で「あれ、ここはどう書くんだったか」と何度も戻って確認することになります。結果として、想像以上に時間がかかってしまうのです。
研究に集中するための選択肢
投稿先変更に伴うフォーマット調整は、再投稿には欠かせない重要な作業です。しかし一方で、この作業そのものが研究成果の価値を高めるわけではないという事実にも目を向ける必要があります。
研究者にとって最も大切なのは、研究の内容を深め、論文の質を高め、次の研究テーマへと歩みを進めることです。フォーマット調整に膨大な時間を費やしてしまうと、その分だけ本来の研究活動に充てられる時間が失われてしまいます。
だからこそ、必要な部分だけを専門サービスに任せ、本来の研究や論文のブラッシュアップに時間を充てるという考え方が、近年多くの研究者に支持されています。
NAIでは、そのようなニーズにお応えするため、英文校閲を伴わず、投稿先変更に必要なフォーマット調整のみを行う「投稿先変更フォーマット調整プラン」をご用意しています。参考文献の形式変更、タイトルページの再構成、図表の形式調整、Abstractのリライト、投稿規定への総合的な対応など、再投稿準備を効率よく進められるよう、経験豊富なスタッフがサポートいたします。
リジェクト後の再投稿を、少しでもスムーズに、そしてストレスなく進めたい——そうお考えの研究者の皆様は、ぜひ一度ご相談ください。
