「英語の文法は一通り勉強したはずなのに、なぜか英文を書くと不自然になってしまう」

「単語や文法は間違っていないと思うけれど、ネイティブに直されることが多い」

英語論文や学会発表資料を作成している研究者の方の中には、このような経験がある方も多いのではないでしょうか。

実は、英語を書くときの間違いには、単純な「文法知識の不足」だけではなく、日本語と英語の構造や考え方の違いが関係している場合があります。

NAIでは2017年7月、Dr. Sonia Sharminによるコラム「Typical Writing Mistakes of Japanese learners of English PART I」を公開しました。

このコラムでは、日本で大学レベルのAcademic Englishを教え、科学論文のproofreader・editorとしても経験を積んだDr. Sonia Sharminが、日本人英語学習者に特に多く見られる典型的な英文ミスを紹介しています。

今回はその中から8つのポイントを取り上げ、研究者が英語論文を書く際にも役立つ形でご紹介します。


1.冠詞(a / an / the)の抜け

最初に紹介されているのは、冠詞の付け忘れです。

コラムでは、日本語には英語のような通常の複数形がなく、また名詞の前に冠詞を置くという仕組みもないことが、日本人英語学習者のミスにつながると説明しています。

例えば、

“Write few lines.”

は誤りで、

“Write a few lines.”

が正しい表現です。

日本語では「数行書いてください」と言えば成立するため、「few」の前に「a」が必要だという感覚が身につきにくいことがあります。

英語論文でも、冠詞は非常に頻繁に登場します。

例えば、

  • a study
  • a method
  • an experiment
  • the result
  • the present study

などです。

しかも、冠詞は単純に「名詞の前にaを付ければよい」というものではありません。

その名詞が初めて登場するのか、特定のものを指しているのか、可算名詞なのか、単数なのか複数なのか――。

こうした判断が必要になるため、日本語を母語とする人にとっては難しいポイントの一つです。


2.疑問文の語順

次は、疑問文の語順です。

コラムでは、

“The word order in interrogative sentences is stricter in English than in Japanese.”

と説明されています。

例えば、

“Why you are not doing anything?”

ではなく、

“Why are you not doing anything?”

が正しい形です。

日本語では「なぜあなたは何もしないの?」というように、疑問詞を付けても基本的な文の構造を大きく変える必要はありません。

一方、英語では疑問文を作る際に、主語と助動詞などの語順を変える必要があります。

もちろん、英語論文では日常会話のような疑問文を多用することはありません。

しかし、研究論文でも、

What are the possible mechanisms underlying this phenomenon?

How does this treatment affect cell proliferation?

のような疑問形の表現を使うことがあります。

英語では「疑問詞を付けるだけ」ではなく、文全体の構造を確認することが重要です。


3.日本語の感覚で「分かる部分」を省略してしまう

3つ目は、必要な単語を省略してしまうことです。

コラムでは、

“omission of pronouns or other words understood from the context is much less common in English than in Japanese.”

と説明しています。

つまり、日本語では文脈から分かる場合に主語や目的語などを省略することが非常に多い一方、英語ではそのような省略はそれほど一般的ではありません。

例えば、

“Finish?”

ではなく、

“Have you finished?”

とする必要があります。

日本語なら「終わった?」だけで自然に成立します。

しかし英語では、誰が何を終えたのか、そしてどのような時制・文構造なのかを明確にする必要があります。

この違いは、英語論文を書くときにも影響します。

日本語の文章を頭の中で作ってから、それを一文ずつ英訳すると、主語が抜けた英文や、何を指しているのか分かりにくい英文になってしまうことがあります。


4.前置詞の抜け

研究者にとって特に注意したいのが、4つ目の前置詞の使い方です。

コラムでは、

“Some mistakes are made by omitting prepositions after some specific words.”

としています。

例として挙げられているのが、

“She explained me the matter.”

という表現です。

正しくは、

“She explained the matter to me.”

となります。

これは、単語の意味を知っているだけでは判断しにくいタイプのミスです。

「explain=説明する」という意味を知っているので、日本語の「私に説明した」をそのまま英語にしてしまい、

explain + 人 + 物

としてしまいがちです。

しかし、基本的には、

explain + 物 + to + 人

という形を取ります。

英語論文でも、動詞と前置詞の組み合わせは非常に重要です。

例えば、

  • depend on
  • consist of
  • contribute to
  • result in
  • be associated with
  • be involved in

など、研究論文では特に頻繁に登場します。

単語単体では正しくても、その単語が文中でどのような形を取るのかまで確認することが重要です。


5.付加疑問文(Tag Questions)

5つ目は、付加疑問文です。

例えば、

“You speak good English, isn't it?”

は不自然で、

“You speak good English, don't you?”

となります。

コラムでは、

“Unlike Japanese, English has no fixed phrase which can be tagged on to the end of a sentence to convert it into a question.”

と説明しています。

日本語では「~ですよね?」のような表現を付ければ、比較的簡単に確認や同意を求めることができます。

一方、英語の付加疑問文では、前の文に応じて、

  • do / does
  • did
  • is / are
  • was / were
  • can
  • will

などを使い分ける必要があります。

論文では頻出する表現ではありませんが、英語の基本的な構造を理解するうえでは分かりやすい例です。


6.余分な単語を入れてしまう

6つ目は、意味としては何となく分かるものの、英語では余分な単語を入れてしまうケースです。

コラムでは、

“orange color book”

“big size car”

といった表現を例に挙げています。

これらは、

“orange book”

“big car”

とする方が自然です。

日本語では「オレンジ色の本」「大きなサイズの車」のような表現が自然なので、直訳すると余分な単語が入りやすくなります。

これは英語論文でもよくある問題です。

日本語では丁寧に説明するために多くの言葉を使っていても、英語では一つの形容詞や名詞だけで十分に意味が伝わることがあります。

英文校閲でよく行われる作業の一つが、こうした冗長な表現を整理することです。

「間違ってはいないけれど、もっと簡潔に言える」。

この違いを理解することが、読みやすい英語につながります。


7.he / she / it の使い分け

7つ目は、代名詞の性別に関する間違いです。

コラムでは、

“Mixing up 'he' and 'she' may seem like a small point, but it is irritating to English speakers and is a source of confusion.”

と説明されています。

また、物については基本的に「it」を使います。

例えば、

“The door is open; please shut her.”

ではなく、

“The door is open; please shut it.”

となります。

日本語では、人や物について「彼」「彼女」「それ」のような代名詞を英語ほど頻繁には使いません。

そのため、英語を書くときに代名詞の使い分けが難しくなることがあります。

研究論文では、さらに「this」「that」「it」「they」などが何を指しているのかという問題もあります。

例えば、

“This suggests that it is important.”

と書いたとき、「this」が何を指し、「it」が何を指すのかが明確でしょうか。

科学論文では、こうした代名詞の指示対象が曖昧になっていないかという点も、読みやすさに大きく関係します。


8.三人称単数現在形と助動詞の組み合わせ

最後に紹介されているのが、**三人称単数現在形の「-s」**に関するミスです。

コラムでは、doesの後に三人称単数現在形を置いてしまう例として、

“Does the gardener waters the flowers?”

を挙げています。

正しくは、

“Does the gardener water the flowers?”

です。

否定文でも、

“The man does not waters the flowers.”

ではなく、

“The man does not water the flowers.”

となります。

ポイントは、doesがすでに三人称単数を示しているため、その後の動詞は原形になるということです。

さらに、can、must、may、shall、willなどの助動詞についても同じような注意が必要です。

例えば、

“He can speaks English very well.”

ではなく、

“He can speak English very well.”

となります。

これは英語学習の初期段階で習う文法ですが、実際の英文を書くときにも意外と見落とされることがあります。


日本人の「英語の間違い」は、単なる文法ミスではない

このコラムで興味深いのは、冒頭で、

“some errors seem to possess a relation with the students' mother tongue.”

と述べている点です。

つまり、英語学習者の間違いには、母語との関係があるものも存在するということです。

日本語と英語では、語順、冠詞、複数形、主語の扱い、前置詞など、さまざまな点で仕組みが異なります。

そのため、日本語では自然な表現をそのまま英語に置き換えようとすると、不自然な英文になることがあります。

これは「英語力が低いから間違える」という単純な話ではありません。

むしろ、日本語では自然な考え方が、英語ではそのまま通用しないということを理解することが重要です。


英語論文では「正しい」だけでなく「自然で明確」が重要

研究者が英語論文を書く場合、求められるのは単に文法的に正しい英文だけではありません。

研究内容を正確に伝え、読み手が誤解せず、スムーズに読み進められる英文であることも重要です。

例えば、

「文法的には間違っていないけれど、少し日本語的な表現になっている」

「前置詞の選択が不自然」

「冠詞が抜けている」

「同じ意味の単語を重ねていて冗長」

「代名詞が何を指しているのか分かりにくい」

といった問題は、本人だけでは見つけにくいことがあります。

特に、自分で書いた英文は、内容をすでに理解しているため、多少曖昧な表現でも意味を補完して読めてしまいます。

だからこそ、第三者の視点から英文を確認することに意味があります。


NAIの英文校閲で「伝わる英語論文」へ

NAIでは、科学論文を中心とした英文校閲・翻訳サービスを提供しています。

文法や語法の確認はもちろん、研究者が意図する内容を保ちながら、英語として自然で読みやすい文章になるようサポートしています。

今回紹介したような、

  • 冠詞の抜け
  • 前置詞の使い方
  • 動詞の形
  • 冗長な表現
  • 代名詞の指示関係
  • 日本語の直訳による不自然な表現

などは、英文を書く際に特に注意したいポイントです。

「自分では文法的に問題ないと思うけれど、英語として自然なのか確認したい」

「投稿前に英文全体をチェックしてほしい」

「できるだけ自分の文章や表現を残したまま、必要な部分だけ改善したい」

という場合には、英文校閲の利用をご検討ください。


まとめ――「日本語では自然」を一度疑ってみる

今回紹介した「Typical Writing Mistakes of Japanese learners of English PART I」では、日本人英語学習者にありがちな8つの典型的なミスが紹介されています。

  1. 冠詞の抜け
  2. 疑問文の語順
  3. 単語の省略
  4. 前置詞の抜け
  5. 付加疑問文
  6. 余分な単語の使用
  7. he / she / it の混同
  8. 三人称単数や助動詞の後の動詞の形

一つひとつを見ると、英語学習の基本的な内容に思えるかもしれません。

しかし、これらのミスの背景には、日本語と英語の構造の違いがあります。

だからこそ、英語を書くときには、

「日本語ならこう言う」ではなく、「英語ではどう表現するのが自然なのか?」

という視点を持つことが大切です。

特に英語論文では、一つひとつの表現が研究内容の伝わり方に影響します。

論文を書き終えたら、単にスペルミスや文法ミスを探すだけではなく、**「日本語の発想をそのまま英語にしていないか」「英語として自然な表現になっているか」**という視点でも見直してみてはいかがでしょうか。

そして、自分では判断が難しい場合には、専門家による英文校閲を活用するのも一つの方法です。

NAIでは、科学論文の英文校閲を通して、研究者の皆様の「伝わる英語」をサポートしています。