論文の類似性チェックを行い、想定より高いSimilarity Indexが表示された場合、「どこを、どのように直せばよいのか」と悩むことがあります。
類似率を下げるために重要なのは、一致した単語を機械的に別の単語へ置き換えることではありません。修正が必要な箇所について、引用、パラフレーズ、文構造、情報の提示方法などを見直すことが基本です。
特に自然科学系の論文では、専門用語や実験条件など、正確性を保つために安易に変更すべきではない表現もあります。
では、実際にどのような方法で類似性を下げればよいのでしょうか。
1.単語ではなく「文の構造」から書き換える
よくある方法が、一致している単語を類義語に変更することです。
たとえば、既存文献に、
Previous studies have demonstrated that X significantly increases Y.
という記述があったとします。
これを、
Previous studies have shown that X significantly enhances Y.
と変更しても、文の構造や情報の順序はほとんど変わっていません。
さらに、increase と enhance は必ずしも同じ意味ではありません。測定値や量が「増加した」のであれば、increase の方が正確な場合があります。
そこで、単語を一つずつ変更するのではなく、
A significant increase in Y following X has been reported in previous studies.
のように、何を主語にするか、どの情報から提示するかなど、文章全体を組み直す方法が考えられます。
パラフレーズでは「違う単語を使う」ことより、「同じ内容を自分の文章として再構成する」という視点が重要です。
2.一つの先行研究を一文ずつ言い換えない
IntroductionやDiscussionでは、複数の先行研究を紹介することがあります。
このとき、原著論文の文章を一文ずつ見ながら、それぞれを別表現に変えていくと、単語は変わっても元論文の文章構造や論理展開が残りやすくなります。
たとえば、先行研究を紹介する際には、一つの論文の文章を一文ずつ言い換えるのではなく、複数の研究から得られる知見を整理して、自分の論文の流れに沿って再構成する方法があります。
例
・研究AではXがYを増加させることが報告された
・研究Bでは、その効果が高温条件で大きくなることが示された
・研究Cでは、その効果が時間とともに低下することが報告された
これらを個別に紹介するだけでなく、**「これまでの研究から、XはYを増加させるものの、その効果の大きさは温度や時間によって変化することが分かっている」**と整理することができます。
英文では、Previous studies have shown that X increases Y, although the magnitude of this effect varies with temperature and time [1–3]. とまとめられます。
さらに、今回の研究がこれまで検討されていない条件Zを対象とするのであれば、However, little is known about the effect of X under condition Z. と続けることで、「これまでに分かっていること」から「まだ分かっていないこと」、そして「今回の研究で明らかにしたいこと」へとつなげられます。
このように、先行研究の内容を十分に理解したうえで情報を整理し直すことで、単なる単語や表現の置き換えではなく、自分の論文の論理に沿った文章として再構成することができます。
なお、パラフレーズした場合でも、各知見の出典を適切に示す必要があります。
3.専門用語は無理に言い換えない
一方、すべての単語を変更する必要があるわけではありません。
自然科学論文では、研究分野で意味が確立している専門用語が数多く使われます。
たとえば、
- polymerase chain reaction
- 95% confidence interval
- statistically significant
- body mass index
などを、類似性を避けるという理由だけで別の表現に変更するのは適切ではない場合があります。
論文では、表現のバリエーションよりも用語の正確性や一貫性を優先すべき場面があります。
Similarity Reportで一致しているからといって、すべてを別表現に変えるのではなく、「この語は変更しても研究上の意味が維持されるのか」を考える必要があります。
4.引用方法を見直す
パラフレーズ以前に、引用の方法を確認した方がよい場合もあります。
他者の文章をそのまま使用する必要がある場合には、ジャーナルのルールなどに従って適切に引用します。一方、先行研究の結果や考え方を自分の言葉で説明する場合も、出典を明示する必要があります。
注意したいのは、「文章を言い換えれば引用しなくてもよい」ということではない点です。
パラフレーズは出典を隠すための方法ではありません。文章表現と引用の適切さは分けて考える必要があります。
5.書き換えた後に「研究上の意味」を確認する
類似率を下げるためのリライトで、自然科学論文では特に注意したいポイントです。
たとえば、
X was associated with an increased risk of Y.
という文章を、
X increased the risk of Y.
と書き換えたとします。
英文としては自然ですが、was associated with から increased に変わることで、関連性を示していた表現が、因果関係を示すような表現に変わる可能性があります。
同様に、
X may improve Y.
を、
X improves Y.
と変更すれば、may がなくなることで主張の確実性が強くなります。
類似率が下がっても、元の研究結果とは異なる意味になってしまっては適切なリライトとはいえません。
修正後は文法や読みやすさだけでなく、数値、条件、比較関係、因果関係、主張の強さなどが元の内容から変化していないかを確認することが重要です。
「違う英文にする」ことが目的ではない
類似性を下げる作業では、「元の文章とできるだけ違う英文にしよう」と考えがちです。しかし、自然科学論文では、研究内容の正確性を維持することが大前提です。
変えるべき部分は文章の構造から見直し、変えるべきではない専門用語は維持する。そして、修正後も科学的な意味が変わっていないことを確認する。
このバランスが、類似性を適切に下げるうえで重要になります。
NAIの「類似性削減校閲」では、iThenticateによる分析結果をもとに、専門エディターが類似箇所を確認し、原意をできる限り維持しながら英文の校閲・リライトを行います。
自分で書き換えてみたものの、「意味まで変わっていないか不安」「専門用語を残したまま、どこまで文章を変更すればよいか分からない」といった場合には、専門的な校閲を利用することも選択肢の一つです。 類似率を下げることは、単なる単語の置き換えではありません。研究内容を守りながら、文章を適切に再構成することが重要です。
