論文投稿の準備をしていて、「Data Availability Statement」という項目を見かけたことはありませんか?
Springer Natureは、すべての原著論文にDASを含めることを求めています。
「研究データを全部公開しないといけない?」「患者データなので公開できない場合は?」「Supplementary Informationに入れてあれば十分?」など、いざ書こうとすると迷いやすい項目です。
Data Availability Statement(DAS)は、簡単にいえば、論文の結果を支える研究データがどこにあり、読者がどのような条件でアクセスできるのかを示す記載です。
重要なのは、必ずしも「すべてのデータを一般公開する」という意味ではないことです。公開できないデータについても、その理由やアクセス条件を明確にすることが求められる場合があります。
Data Availability Statementには何を書く?
記載内容は研究やジャーナルによって異なりますが、基本的には次のような情報を示します。
- 研究データを公開しているか
- 公開している場合、どこでアクセスできるか
- DOIやアクセッション番号などの識別情報
- 公開していない場合、その理由
- 条件付きで提供できる場合、そのアクセス方法
Springer Natureでは、研究で新たに生成したデータだけでなく、研究結果や解析を支えるために利用した既存のデータについても、DASでアクセス方法を説明するよう案内しています。
① データをリポジトリで公開している場合
例えば、研究データを公的なリポジトリに登録している場合は、リポジトリ名やDOI、アクセッション番号などを示します。
The datasets generated during the current study are available in the [repository name] repository, [persistent link or DOI].
ポイントは単に「データは公開しています」と書くのではなく、読者が実際にデータへたどり着ける情報を示すことです。Nature Portfolioでも、公開データについてはアクセッションコードなどの識別子をData Availability Statementに記載することを求めています。
② 「リクエストがあれば提供」でもいい?
よく見かけるのが、次のようなテンプレートです。
The datasets generated during and/or analysed during the current study are available from the corresponding author on reasonable request.
このように、研究データを「合理的な要請に応じて責任著者から提供する」とする記載は、Data Availability Statementの一つのパターンです。Springer Natureのガイダンスでも、著者へのreasonable requestによってデータを提供する記載例が紹介されています。
ただし、どのジャーナルでもこの一文を書けばよい、というわけではありません。研究分野やデータの種類によっては、指定されたリポジトリへの登録が必要な場合があります。また、出版社やジャーナルによってデータ共有に関する要求レベルも異なります。
そのため、「いつもの定型文」をそのまま使うのではなく、投稿先のデータポリシーを確認する必要があります。
③ データを公開できない場合は?
臨床研究などでは、個人情報や倫理上の理由から研究データをそのまま公開できないこともあります。
その場合も、単に「Data are not available.」とするのではなく、なぜ公開できないのか、条件付きでアクセスできるのかを説明することが重要です。
The datasets are not publicly available due to participant privacy restrictions but are available from the corresponding author on reasonable request.
Springer Natureも、研究参加者のプライバシーなどを理由にデータを公開できない場合には、その理由とアクセス条件をDASに記載するよう求めています。つまり、「公開できない=Data Availability Statementを書けない」ではありません。「公開できない」という状況も含めて、データがどのように扱われているのかを透明に示すのがDASの役割です。
Supplementary Informationにデータを入れていれば十分?
研究を支えるデータが論文本文やSupplementary Informationにすべて含まれている場合、次のように記載できるケースがあります。
All data generated or analysed during this study are included in this published article and its Supplementary Information files.
Scientific Reportsでも、この形式が例として示されています。一方、大規模なデータセットについては、Supplementary Informationではなくリポジトリへの登録が推奨・要求される場合があります。Nature Portfolioでは、大規模データセットをSupplementary Informationに入れることは強く推奨せず、リポジトリの利用を優先しています。
したがって、「Supplementaryに入れたから大丈夫」ではなく、そのデータをどこで共有することが投稿先から求められているかを確認する必要があります。
出版社が同じでも、ルールが同じとは限らない
例えばElsevierでは、ジャーナルごとに研究データについて異なるガイドラインが設定されており、データの登録・引用・リンクを「推奨」するレベルから、「必須」とするレベルまで複数の選択肢があります。
つまり、「Elsevierだからこの書き方」「Nature系だからこの定型文」と出版社名だけで判断するのは避けた方がよいでしょう。投稿前には、対象ジャーナルのGuide for AuthorsやResearch Data Policyを確認することが重要です。
Data Availability Statementは投稿直前に考えればいい?
できれば、もう少し早い段階で確認しておくことをおすすめします。
投稿直前になって、「このデータはリポジトリへの登録が必要だった」「DOIやアクセッション番号が必要だった」「第三者データの利用条件を確認しなければならない」と分かると、投稿準備に時間がかかる可能性があるためです。
Data Availability Statementは、単なる投稿フォームの一項目ではなく、研究データをどこまで、どのような条件で読者に提供できるのかを示す情報です。
投稿先を決めた段階で、「Data Availability Statementは必要か」「対象となるデータは何か」「どこで共有する必要があるか」「公開できないデータはどう記載するか」まで確認しておくと、投稿直前の作業がスムーズになります。
NAIでも、投稿規程に沿った原稿の確認やフォーマット調整を承っています。英文やReferencesだけでなく、投稿時に必要となる各項目についても、まずは投稿先の最新規程を確認することが大切です。
参考情報
Springer Nature: Data availability statements
https://www.springernature.com/in/authors/research-data-policy/data-availability-statements
Springer Nature: Research data policy
https://www.springernature.com/gp/authors/research-data-policy
Scientific Reports: Editorial policies
https://www.nature.com/srep/journal-policies/editorial-policies
Elsevier: Research data guidelines
https://www.elsevier.com/researcher/author/tools-and-resources/research-data/data-guidelines
