2016年12月 エディターP.W.のコラムから学ぶ、読みやすい英語論文を書く5つのコツ

文法の正しさだけでは足りない理由

英語で論文を書くとき、多くの研究者がまず気にするのは「文法の正しさ」ではないでしょうか。三単現のS、時制の一致、冠詞の使い方――こうした基本的な文法事項に気を配ることは、論文執筆の第一歩として欠かせません。

もちろん、文法ミスをなくすことはとても重要です。しかし、実はそれだけでは「読みやすい論文」にはならないのです。

査読者やジャーナルの編集者が評価するのは、研究内容そのものだけではありません。「その内容が、論理的で読みやすい文章として表現されているか」という点も、非常に大きな評価要素となります。どれほど優れた研究成果でも、伝わりにくい英語で書かれていれば、その価値は十分に届きません。

今回ご紹介するのは、2016年12月にNAIのネイティブエディター P.W. が執筆したコラム「5 Tips for Improving the Style of Your Paper」です。約10年前の記事ですが、その内容は現在も色あせることなく、多くの研究者にとって有益な示唆に富んでいます。

2016年12月 エディターP.W.より

Writing a paper in another language is a tremendous challenge and I continue to be impressed how well our authors succeed at this difficult task.

My experience after more than ten years of editing NAI papers is that authors need help in two areas. The first is in correcting grammar, and it is important to get this right. The second is in rewording sentences to make the text flow in a logical and easy-to-read way. The better style a paper has, the more likely reviewers and editors will be impressed.

P.W.氏は、10年以上にわたりNAIで数多くの論文を校正してきた経験から、「著者が本当に必要としている支援は、文法の修正だけではない」と語っています。

母語ではない言語で論文を書くという行為そのものが、非常に大きな挑戦です。そのうえで、単に文法的に正しい英語を書くだけでなく、論理的で流れるような文章に整えていくこと―これこそが、査読者や編集者に良い印象を与える論文への鍵となります。

論文の評価を左右するのは、内容の正確さに加えて、**文章の流れ(スタイル)**なのです。

そのうえで、P.W.氏は読みやすい論文にするための5つのポイントを紹介しています。ひとつずつ見ていきましょう。

① 同じ表現を繰り返さない

論文のタイトルや研究テーマに含まれる専門用語は、その研究を特徴づける重要な要素です。しかし、同じ長いフレーズを何度も繰り返すと、文章は途端に読みにくくなってしまいます。

例えば、"the newly developed high-performance catalyst"といった長い名詞句を段落ごとに何度も登場させると、読者は同じフレーズを繰り返し目で追うことになり、集中力が削がれてしまいます。

このような場合、代名詞(it, this catalyst など)や短い表現(the catalyst, this material など)を適切に使い分けることで、文章はぐっと自然になります。専門用語の正確さを保ちながら、読者にストレスを与えない工夫が必要です。

② 長い一文は避ける

日本語では一文が長くなりがちですが、英語では短く区切ったほうが読みやすくなります。これは、日本語と英語の構造的な違いに起因する、多くの日本人研究者が直面する課題のひとつです。

例えば、「〜であり、〜だが、〜のため、〜と考えられる」といった日本語の構造をそのまま英語に置き換えようとすると、関係代名詞や接続詞が多用された長大な一文になってしまいます。

一つの長文よりも、二つ、三つの短い文に分けたほうが、論理の流れも明確になります。ピリオドで区切ることを恐れず、「一文一義」を意識することで、格段に読みやすい英文になります。

③ 図や表の説明は現在形で書く

論文では、図表を参照する際に時制の選び方で迷うことがあります。P.W.氏は、次のような表現を推奨しています。

"The results are shown in Fig. 1."

このように、図表については現在形を用いるのが一般的です。「実験は過去に行った」ため過去形を使いたくなる気持ちもわかりますが、図表そのものは論文の中に「今、存在している」ものです。

読者は「今まさに図を見ている」ため、現在形の方が自然な表現になります。実験の実施は過去形("We measured...")、結果の提示は現在形("Figure 1 shows...")と使い分ける意識を持つとよいでしょう。

④ 文末の「ぶら下がり表現」を減らす

英文を書き慣れていないと、情報を文末に付け足していく癖がついてしまうことがあります。

例えば、

"..., as shown by FTIR"

のように文末へ説明を付け加えるよりも、

"FTIR showed that..."

と主語を明確にした方が、読者にとってわかりやすい文章になります。「誰が/何が、何をした」という英語の基本構造を意識することで、能動的で力強い表現になるのです。

また、日本人研究者がよく使う表現に「respectively」があります。これは複数の事柄を対応させて述べるときに便利な語ですが、必要以上に使うと文章が硬く、読みにくくなります。使いどころを見極めることも、自然な英文を書くポイントです。

⑤ 結論は結果の中で示す

「以上の結果から目的を達成したことが分かった。」

日本語の論文ではよく見かける表現ですが、英語論文にそのまま持ち込むと冗長に感じられることがあります。「結果を述べた後にもう一度結論を述べる」というスタイルは、英語の読者にとってはやや回りくどく映るのです。

その代わり、

"The presence of the signal confirmed that..."

のように、結果そのものが結論を示す文章にすることで、より説得力のある論文になります。データの提示と、そこから導かれる意味合いを一体化させることで、簡潔かつ論理的な文章に仕上がります。

今も変わらない「読みやすさ」の重要性

このコラムが公開された2016年から、約10年の月日が流れました。この間、学術出版を取り巻く環境は大きく変わりました。

現在では生成AIや翻訳ツールの発達により、英文を書くハードルは以前より大きく下がっています。ChatGPTやDeepLといったツールを活用すれば、母語ではない研究者でも、比較的スムーズに英文ドラフトを作成できるようになりました。

しかし、「自然で読みやすい英語を書く」という課題は、今も変わりません。むしろ、AIが生成した英文をそのまま使ってしまうことで、かえって「著者らしさ」や「論理の流れ」が失われてしまうケースも見受けられます。

AIは英文を作成できますが、文章全体の流れや読みやすさ、査読者に好まれる表現まで最適化するには、やはり経験豊富な人による視点が欠かせないのです。P.W.氏が10年前に指摘した課題は、AI時代の今こそ、あらためて重要性を増していると言えるでしょう。

NAIは「伝わる論文づくり」をサポートします

NAIでは、文法やスペルの修正だけにとどまらず、論文全体のスタイルや読みやすさにも配慮した英文校正・リライトを行っています。

具体的には、以下のようなサポートをご提供しています。

  • 文法・スペル・冠詞のチェック
  • ネイティブらしい自然な表現へのリライト
  • 冗長な文章の整理と簡潔化
  • 論理的で読みやすい構成へのブラッシュアップ
  • AI翻訳後の英文チェックやポストエディット

これらを通じて、研究内容がより正確に、そして読み手に伝わりやすくなるようお手伝いしています。特にAI翻訳を活用された原稿については、AI特有の不自然さを整え、著者の意図が明確に伝わる文章へと磨き上げることも可能です。

「正しい英語」から「読まれる英語」へ

論文は、単に英語として正しいだけでは十分ではありません。査読者や編集者がストレスなく読み進められ、研究の価値が自然と伝わる文章であることが求められます。

「正しい英語」と「読まれる英語」の間には、確かなギャップがあります。そのギャップを埋めるのは、経験を積んだネイティブエディターの視点であり、著者の研究に対する深い理解です。

2016年にP.W.氏が紹介した5つのポイントは、今でも英語論文を書くすべての研究者に役立つ、普遍的なアドバイスです。同じ表現を繰り返さない、長い一文を避ける、図表は現在形で、ぶら下がり表現を減らす、結論は結果の中で示す――どれもすぐに実践できる、シンプルかつ効果的なコツばかりです。

NAIはこれからも、ネイティブエディターの知見と最新のAI技術を組み合わせ、お客様の論文が「正しい英語」だけでなく、「世界に伝わる英語」になるよう、心を込めてお手伝いしてまいります。

あなたの研究成果が、より多くの読者に、より正確に届くように。まずは一歩、「読みやすさ」を意識した英文執筆から始めてみませんか。