
「論文の締め切りはまだ先だから大丈夫。」
そう思っていたはずなのに、気がつけば、
「締め切りまであと3日……」
「英文校閲を依頼しなければ」
「図表も直さなければ」
「共著者にも確認してもらわなければ」
「投稿規定も確認しなければ」
「Cover Letterも書かなければ……」
と、突然ものすごい勢いで仕事が押し寄せてくる。
そして、毎回思うのです。
「次はもっと早く始めよう。」
ところが、次の論文でも同じことが起こる。
なぜ研究者は、こうも締め切り直前になってしまうのでしょうか?
「自分の計画性がないからだ」
「ついつい先延ばししてしまうからだ」
そう思っている方も多いかもしれません。
しかし、実はこの現象について、非常に興味深い論文があります。
それが、松尾豊氏による論文、
「なぜ私たちはいつも締め切りに追われるのか」
です。
この論文は、まさに研究者自身が感じている「締め切りあるある」を、かなりユニークな視点から分析しています。
そして読んでいくと、
「締め切りギリギリになってしまうのは、単純に自分が怠けているからではないのかもしれない」
と思えてきます。
「研究者はいつも締め切りに追われている」
論文の冒頭には、こんな一文があります。
「研究者はいつも締め切りに追われている。」
さらに続けて、
「余裕をもって早くやらないといけないのは分かっている。毎回反省するのに、今回もまた締め切りぎりぎりになる。」
と書かれています。
……これ、研究者の方ならかなり心当たりがあるのではないでしょうか。
しかも面白いのは、著者自身も、
「なぜできないのだろうか?我々はあほなのだろうか?」
と問いかけていることです。
かなり率直です。
論文の締め切りが近づいていることは分かっている。
早くやったほうが楽なのも分かっている。
前回もギリギリになった。
だから今回は早くやろうと思った。
それなのに、またギリギリになる。
研究者なら、一度くらい経験があるのではないでしょうか。
「バタ男」という名前までついている
論文では、締め切り間際になってバタバタする人を、
「バタ男」
と呼んでいます。
もちろん、正式な学術用語というわけではありません。
しかし、この「バタ男」というネーミングが、研究者の締め切り直前の状態を妙に的確に表しています。
論文投稿直前になると、
「あと少し!」
「ここだけ直せばいい」
「参考文献だけ確認しよう」
と思っていたのに、次から次へと修正箇所が見つかる。
気がつけば夜。
さらに翌朝も修正。
そして投稿直前になって、最後の英文チェック。
まさに「バタバタ」です。
しかも、この現象は論文だけではありません。
著者は、解説記事やちょっとした文章についても、
「締め切り直前になって、または締め切りを過ぎてやっとできることが多い。」
と述べています。
つまり、
「論文を書く人だけが特別に怠けている」というわけではない
ということです。
そこで登場する「ネルー値」
この論文で最もユニークなのが、
「ネルー値」
という概念です。
松尾氏は、研究者における「精神的なゆとり」を表す単位としてネルーを提案しています。
例えば、
「今日、このまま寝てしまっても締め切り等に影響がない状態」
が高いネルー値の状態です。
逆に、
「今日締め切りなのに、まだ終わっていない」
という状態では、ネルー値は非常に低い。
つまり、ざっくり言えば、
ネルー値=「まだ余裕がある」という精神的な余白
と考えると分かりやすいでしょう。
余裕があるときには、
「今日はここまででいいか」
と眠ることができます。
ところが締め切りが迫ってくると、
「寝ている場合ではない!」
となる。
ネルー値が一気に下がっていきます。
では、なぜ「余裕を持って仕事をする」のが難しいのか?
ここが、この論文の面白いところです。
普通に考えれば、
「締め切りまで十分な時間を確保して、少しずつ仕事を進めればいい」
はずです。
しかし、研究者の仕事には、そう単純にはいかない部分があります。
なぜなら研究者が行っているのは、単純な「作業」だけではないからです。
論文を書く。
文章を組み立てる。
結果を解釈する。
新しいアイデアを考える。
研究の意味を整理する。
Discussionを書く。
こうした作業には、集中力が必要です。
論文では、仕事を進めるための「リソース」として集中力を考えます。
そして、
「集中してやると仕事は速く片付くが、疲れてしまう。常に最大限集中できるわけではない。」
と説明しています。
つまり、
集中力は無限ではない。
これが重要なポイントです。
「創造的な仕事」は、集中すると一気に進む
論文では仕事を、集中力と効率の関係から大きく二つに分けています。
一つは、
創造的な仕事。
もう一つは、
やっつけ仕事。
です。
著者は、創造的な仕事について、
「集中して一気にやるのが効率的」
としています。
一方、やっつけ仕事は、
「時間内にだらだらやるのが効率的」
とされています。
研究者にとって重要なのは、もちろん前者でしょう。
論文の文章を考える。
研究結果をどう説明するか考える。
新しい仮説を考える。
こうした作業は、単純に「8時間机の前に座っていれば8時間分進む」というものではありません。
むしろ、
集中できた1時間で、数時間分の仕事が進むことがある。
だからこそ、締め切りが近づいたときに突然、論文が進み始めることがあります。
「あと3日しかない!」となった瞬間、なぜ進むのか?
この論文では、締め切りが近づいて仕事の期間が半分になったとき、どうなるのかをモデル化しています。
直感的には、
「時間が半分になったなら、集中力を上げるしかない」
ということになります。
そして、創造的な仕事の場合、
集中力を上げることで、仕事の効率がそれ以上に上がる可能性がある。
つまり、
「時間がない!」
↓
「まずい!」
↓
「集中しなければ!」
↓
「ものすごく集中する」
↓
「意外と進む!」
という現象が起こり得るわけです。
著者も、
「時間がなくなる→集中力を上げる→仕事の効率が意外に上がる」
というプロセスで、締め切りに間に合わせることが説明できるとしています。
これ、論文執筆をしている人にはかなり納得できる話ではないでしょうか。
「もう無理!」と思ってから、突然スピードが上がる
論文では、この状態に至るまでの時間を、
「限界追い込まれ時間」
と呼んでいます。
この言葉も非常に分かりやすい。
「これはもう間に合わないかもしれない」
と思い始める。
しかし、そこから集中力が一気に高まり、
「いや、まだいける!」
となる。
そして、一気に仕事が進む。
著者は、
「限界追い込まれ時間に達してはじめて、タスクを成し遂げる勝算が見えてくる。」
と説明しています。
だから研究者は、
「締め切りが近づくまで本気を出せない」
というより、
「締め切りが近づくことで、ようやく必要な集中力を引き出せる」
とも考えられるのです。
もちろん、だからといって、
「論文は締め切り直前まで放置しましょう」
という話ではありません。
むしろ、この論文の重要なポイントはそこではありません。
本当に重要なのは「締め切り直前」ではなく「集中力」
論文の終盤には、非常に印象的な指摘があります。
著者は、
「締め切りの直前にやることが重要なのではなく、集中力を上げることが重要である」
と述べています。
これは、論文投稿を考えるうえで非常に重要な視点ではないでしょうか。
「締め切り直前にならないと集中できない」
のではなく、
「締め切りがなくても集中できる方法を身につける」
ことが、本当の意味での解決策なのです。
さらに著者は、
「我々が反省すべきは『早めにやっておけば良かった』ではなく、『もっと集中すべきだった』である。」
とまで書いています。
なかなか厳しい一言です。
でも、確かに考えてみると、
「もっと早く始めればよかった」
だけでは、次の論文でも同じことが起きるかもしれません。
重要なのは、
「限られた時間の中で、どこに集中力を使うのか」
です。
とはいえ、論文投稿には「集中力」だけではどうにもならない作業もある
ここで、もう一つ現実的な問題があります。
論文投稿には、
研究者本人が集中して行うべき仕事
と、
専門家に任せることができる仕事
があります。
例えば、論文の内容を考えること。
研究結果を解釈すること。
最終的な主張を決めること。
これは、研究者自身が集中して取り組む必要があります。
一方、
英文の表現チェック。
文法や語法の確認。
投稿規定に合わせたフォーマット調整。
Similarityの確認。
AIによって作成・修正された英文のチェック。
こうした作業まで、すべて研究者自身が抱え込む必要があるでしょうか。
特に締め切り直前は、
「研究者にしかできない仕事」に集中力を使うこと
が重要です。
「この表現、英語として自然かな?」
「参考文献の形式はこれで合っているかな?」
「投稿規定のこの部分、どうすればいい?」
といった細かな確認に時間を使いすぎると、本来集中すべき仕事に使えるリソースが減ってしまいます。
「もう締め切りまで時間がない!」というときこそ
理想を言えば、論文は余裕を持って完成させたいものです。
英文校閲も早めに依頼する。
共著者の確認時間も確保する。
投稿規定も確認する。
最終チェックの時間も残しておく。
……もちろん、それができれば一番です。
しかし、研究者の現実は、必ずしもそうはいきません。
実験が予定通り進まない。
診療や教育がある。
学会や研究会がある。
学生の指導がある。
共同研究者からの修正が遅れる。
突然、別の仕事が入る。
そうしているうちに、
「締め切りまであと数日」
となることがあります。
そんなとき、
「もっと早くやっておけばよかった……」
と後悔しても、残り時間は増えません。
だからこそ、
今ある時間で、何を自分でやり、何を誰かに任せるか
を考えることが大切です。
いざというときは、NAIにご相談ください
エヌ・エイ・アイ株式会社(NAI)では、科学論文の英文校閲をはじめ、論文投稿に関わるさまざまなサポートを行っています。
「締め切りまで時間がないけれど、英文校閲をお願いできる?」
「この原稿、投稿前に一度チェックしてほしい。」
「英文はできているけれど、投稿規定に合わせるところまで手が回らない。」
「Similarityが気になる。」
「AIを使って作成した英文を投稿して大丈夫か不安。」
など、状況によって必要なサポートは違います。
だからこそ、
「何を依頼したらいいのか分からない」
という段階でも、まずご相談ください。
例えば、
「投稿締め切りまであと○日です。現在この状態なのですが、何をお願いするのがよいでしょうか?」
というご相談でも構いません。
論文投稿は、研究者一人だけで完結する仕事ではありません。
研究そのものに集中するために、専門的な作業を専門家に任せる。
それも一つの「リソース配分」です。
松尾氏の論文が示すように、創造的な仕事では、集中力が非常に重要です。
だからこそ、
研究者にしかできない「考える仕事」に集中していただきたい。
そして、締め切り直前になって、
「もう無理かもしれない!」
となったときには、一人で抱え込まずに、
とりあえずNAIに相談してください。
もちろん、できるだけ早めのご相談がおすすめです。
でも、
「もう締め切りまで時間がないから、相談するのも遅いかな……」
と思う必要はありません。
今の原稿の状態と締め切りを教えていただければ、何ができるかを一緒に考えます。
研究者は、きっとこれからも締め切りに追われます。
論文、学会、研究費申請、査読、その他の仕事……。
締め切りそのものをなくすことは難しいでしょう。
だったら、
限られた時間と集中力を、どこに使うのか。
そして、
自分でやるべき仕事と、誰かに任せられる仕事をどう分けるのか。
そこを考えてみるのも一つの方法です。
「バタ男」になってしまった日も、
「ネルー値」がゼロになってしまった日も、
「限界追い込まれ時間」に突入してしまった日も。
いざというときは、とりあえずNAIにご相談ください。
論文投稿の最後のひと押しを、NAIがお手伝いします。
参考資料URL:http://ymatsuo.com/papers/neru.pdf

