論文投稿を準備されているお客様から、Supplementary Materialsについてご相談をいただくことがあります。
「Figureが多いので、一部をSupplementaryに移しても問題ありませんか?」
「詳しい解析方法はSupplementaryにまとめた方がいいですか?」
「追加データはすべてSupplementaryに入れてよいのでしょうか?」
Supplementary Materials(Supplementary Information、Supporting Informationなどとも呼ばれます)は、本文を補足するデータや方法、図表、動画などを掲載するために利用されます。
ただし、「本文に入りきらないものを置いておく場所」と考えるのは少し注意が必要です。
何を本文に残し、何をSupplementary Materialsにするか、また、どのような形式で提出するかは、投稿先のジャーナルによって異なります。
今回は、実際の主要出版社やジャーナルのガイドラインも参考にしながら、Supplementary Materialsの内容や本文との分け方、投稿前に確認しておきたいポイントを整理します。
Supplementary Materialsには、具体的に何を入れる?
Supplementary Materialsには、本文の内容を補足する追加データや詳細情報などを収録します。
例えば、次のようなものです。
- 主要な結果を補足する追加解析
- 詳細な実験条件や解析条件
- 大規模なデータセット
- 補足的なFigureやTable
- 詳細な計算式や計算過程
- 実験プロトコル
- 動画や音声など、通常の本文では掲載しにくい資料
Natureでは、Supplementary Methods、Supplementary Tables、Supplementary Discussion、Supplementary Equations、Supplementary Notes、Supplementary Data、動画・音声などがSupplementary Informationのカテゴリーとして示されています。PLOSでも、Supporting InformationとしてDataset、Figure、Table、Protocol、Videoなどを提出できます。
ただし、ここで大切なのは、「重要ではない情報をSupplementaryに回す」という考え方ではないことです。
分け方に迷ったときは、
本文:研究の目的、方法、主要な結果、結論を理解するために必要な情報
Supplementary:それらを補足し、さらに詳しく確認するための情報
と考えると整理しやすくなります。
例えば、研究の主要な結論を示す結果は本文で提示し、その結果を裏付ける追加解析や詳細データをSupplementaryにする、といった分け方です。
「Figureが多いから」「文字数を減らしたいから」という理由だけで主要な結果をSupplementaryへ移すのではなく、本文とSupplementary Materialsの役割を考えて振り分けることがポイントです。
詳しいMethodsはSupplementaryにしてもいい?
Methodsの一部をSupplementary Materialsに掲載できるジャーナルもあります。例えばNatureには、Supplementary Methodsというカテゴリーがあります。
そのため、本文では研究デザインや主要な実験・解析方法を説明し、より詳細な実験条件や解析条件などをSupplementary Methodsに記載する、という構成が考えられます。
ただし、どこまでを本文に記載し、どこからをSupplementaryにできるかは、ジャーナルや論文種別によって異なります。
特に、研究結果を理解したり、研究の妥当性を判断したりするために必要な方法まで、単に本文を短くする目的でSupplementaryへ移すのは注意が必要です。
投稿先のInstructions for Authorsで、Methodsの構成や文字数、Supplementary Methodsの扱いを確認してから振り分けるのがよいでしょう。
FigureやTableもSupplementaryにできる?
FigureやTableについても、Supplementaryとして提出できる場合があります。
PLOSでは、Supporting InformationとしてSupporting FigureやSupporting Tableを提出できます。
一方、Natureでは扱いが少し異なります。通常の追加Figureや1ページに収まる標準的なTableはSupplementary Informationではなく、原則としてExtended Dataとして扱うよう案内されています。Supplementary Tableについては、大規模なデータセットやraw dataなど、Extended Data Tableとして扱うのに適さないものが想定されています。
つまり、「本文に入らないFigureだからSupplementary Figureにする」と単純に判断できるわけではありません。
Main Figure、Extended Data、Supplementary Figureなどの区分や名称そのものが、投稿先によって異なるためです。
本文のFigure数が上限を超えた場合なども、すぐにSupplementaryへ移すのではなく、投稿先が追加FigureやTableをどのように扱っているかを確認する必要があります。
Supplementary Materialsと本文の対応も確認する
Supplementary Materialsを作成するときは、資料そのものだけでなく、本文のどこからその資料を参照するかも確認しておきましょう。
Natureでは、Supplementary Informationに含まれる個別の動画やTableなどについて、本文中の適切な位置から参照するよう求めています。Wileyのスタイルマニュアルでも、Supporting Informationを本文中でFigure S1、Table S1、Data S1などとして参照する形式が示されています。
本文とSupplementary Materialsを別々に作成していると、
「本文ではTable S2となっているのに、SupplementaryではTable S3になっている」
「Supplementary Figureを作成したものの、本文のどこからも参照されていない」
「ファイル名と本文中の表記が一致していない」
といった不整合が起こることがあります。
内容だけでなく、本文中の引用、Figure・Table番号、タイトル、ファイル名まで一続きのものとして確認しておくことが重要です。
Supplementary Materialsも「提出する原稿」の一部
Supplementary Materialsは「補足資料」という名称から、単純にファイルにまとめて投稿すればよいと思われることもあります。
しかし、ジャーナルによっては、Supplementary Materialsが著者から提出された状態に近い形で公開されます。
NatureではSupplementary Informationをsubeditしないため、著者自身が明確かつ簡潔に作成し、本文と用語や表記を揃えるよう求めています。PLOSでも、Supporting Informationは著者が提出した状態のまま公開され、copyeditingされないとされています。
そのため、Supplementary Materialsについても、読者が内容を理解できる状態に整えておく必要があります。
FigureやTableのタイトル・説明、略語の定義、単位、番号、用語の表記など、本文では確認したのにSupplementaryでは確認していなかったということがないよう注意したいところです。
ファイル形式や容量は投稿先ごとに確認
もう一つ見落としやすいのが、ファイル形式や容量です。
Natureでは、PDF、Word、Excel、動画・音声など複数の形式を受け付けていますが、ファイル数やファイルサイズについても規定があります。
PLOSでも幅広いファイル形式をSupporting Informationとして受け付けていますが、読者が利用しやすいようファイルサイズに関する推奨事項が示されています。
つまり、「Supplementary Materials」という名称が同じでも、提出方法まで同じとは限りません。
特に投稿先を変更したときは注意が必要です。本文のフォーマットだけを新しいジャーナルに合わせ、Supplementary Materialsは以前の投稿先用のまま、ということがないよう、提出ファイル全体を確認しましょう。
また、研究データについては、Supplementary Materialsとして添付するのではなく、指定されたリポジトリへの登録が必要な場合もあります。Supplementary Materialsにデータを添付できることと、そのジャーナルのデータ共有要件を満たしていることは別の問題なので、Data Availabilityに関する規定もあわせて確認する必要があります。
投稿前に確認したい5つのポイント
Supplementary Materialsを準備したら、最後に次の5点を確認してみましょう。
- 本文とSupplementaryの役割が適切に分けられているか
研究の主要な内容を理解するために必要な情報まで、Supplementaryへ移していないか確認します。 - Supplementaryに入れた内容が投稿先の規定に合っているか
Methods、Figure、Table、Datasetなど、それぞれの扱いを確認します。 - 本文からSupplementaryを適切に参照しているか
Figure S1、Table S1などの参照漏れがないか確認します。 - 番号や表記が一致しているか
本文、Supplementaryファイル、ファイル名の間で、番号、タイトル、用語などに食い違いがないか確認します。 - ファイル形式・容量・ファイル数が規定を満たしているか
内容だけでなく、実際に投稿システムへ提出できる形式になっているかも確認します。
Supplementary Materialsは、論文の主要な内容を補い、読者が研究をより詳しく確認するための資料です。何を入れるかだけでなく、本文との役割分担と投稿先のルールの両方を確認することがポイントになります。
NAIでは、投稿先の規程に合わせた原稿や図表等のフォーマット調整にも対応しています。投稿先を変更した場合も、Supplementary Materialsを含め、提出ファイル全体を新しいジャーナルの規定に合わせて見直すことが重要です。
また、Supplementary Materialsに含めるか否かを迷った際にも、校閲のご依頼に併せて校閲者に確認することが出来ます。
Supplementary Materialsについてお困りごとがございましたら、是非お問合せください。
参考情報
Nature – Supplementary information
https://www.nature.com/nature/for-authors/supp-info
Nature – Formatting guide
https://www.nature.com/nature/for-authors/formatting-guide
PLOS – Supporting Information
https://journals.plos.org/plosone/s/supporting-information
Springer Nature – Supplementary information
https://support.springernature.com/en/support/solutions/articles/6000210902-supplementary-information
Wiley – Journals Style Manual / Supporting Information
https://authorservices.wiley.com/asset/Wiley-Journals-Style-Manual.pdf
