「ジャーナルから指定された期日までに、論文の修正版を提出しなければならない。でも、どうしても間に合わない……」
研究者にとって、こんな状況は決して珍しくありません。
たとえば、日本ではゴールデンウイークやシルバーウイークなどの大型連休があります。海外の共同研究者や編集者とのやり取りが必要な場合には、国によって休暇時期が異なることもあります。
また、
- 共著者の確認に時間がかかっている
- 追加実験・追加解析が必要になった
- 学会や出張が重なった
- 大学・研究機関の長期休暇と重なった
- 個人的な事情で作業時間を確保できない
など、さまざまな理由で、ジャーナルから指定された締切に間に合わなくなることがあります。
では、このような場合、提出期限の延長をお願いすることはできるのでしょうか?
結論からいうと、できます。
ただし、「必ず延長してもらえる」という意味ではありません。ジャーナルによってルールや延長可能な期間が異なるため、まず投稿先の規程を確認したうえで、締切前に編集部へ相談することが重要です。
「締切に間に合わない=即アウト」ではない
ジャーナルによっては、修正版の提出期限について明確に延長申請のルールを設けています。
たとえばElsevierの公式サポートでは、修正版の提出期限を延長したい場合、ジャーナルのEditorに連絡するよう案内されています。
その際には、
- どの程度の追加時間が必要なのか
- 延長を希望する理由
- 新たに希望する提出日
を伝えるよう説明されています。
つまり、「締切までに間に合いそうにないから、何も言わずに遅れて提出する」のではなく、事前に編集者へ事情を説明し、具体的な新しい提出日を提案することが正式な対応の一つとして認められているのです。
Royal Society of Chemistry(RSC)の著者向け案内でも、査読後の修正について「期限を守る」こととともに、必要な場合には延長を依頼することが案内されています。
また、Cambridge University Pressのあるジャーナルの著者向け規程では、修正版の提出にさらに時間が必要な場合、decision editorに連絡して延長を依頼するよう明記されており、編集者は「合理的な範囲」でそのような依頼に対応するとしています。
ただし、延長が「当然認められる」わけではありません
ここは注意が必要です。
ジャーナルによっては、
○日までに修正版を提出してください
という期限を設け、期限を過ぎた場合には、論文を取り下げ扱いにしたり、新規投稿として扱ったりする規程があります。
たとえばWileyのあるジャーナルでは、修正版は原則として決定通知から90日以内に提出する必要があり、延長を希望する場合は90日の期限が来る前に問い合わせることと明記されています。
また別のWiley系ジャーナルでは、旅行その他の事情で期限内の修正が難しい場合に、一定期間の延長を申請できることが具体的に規定されています。ただし、延長申請は元の期限が終了する前に行う必要があります。
一方、日本機械学会の投稿規程では、期限内に回答できない場合の延長について、病気や突然の海外出張などの「不可抗力(force majeure)」を理由として挙げ、延長理由と提出予定日を編集委員会に知らせることを規定しています。
このように、「延長できるか」「何日まで延長できるか」「どのような理由が認められるか」はジャーナルによって異なります。
したがって、まず確認したいのは投稿先ジャーナルの、
Instructions for Authors / Author Guidelines / Submission Guidelines
などです。
ゴールデンウイークやシルバーウイークは理由になる?
ここは少し微妙なポイントです。
「日本では祝日が続くので、締切を延ばしてください」とお願いすること自体はできます。
しかし、「日本が休みだから必ず延長してもらえる」というわけではありません。
ジャーナル側から見れば、ゴールデンウイークやシルバーウイークは日本固有の事情です。
一方で、ジャーナルの編集部や査読者が日本以外の国にいる場合、その期間は通常の業務期間かもしれません。
そのため、
「日本の祝日だから延長してください」
とだけ伝えるよりも、
「日本の祝日に伴う大学・研究機関の休業期間と重なり、共著者との最終確認に必要な時間を確保できない」
など、なぜその休暇が実際に論文作業の遅れにつながるのかを簡潔に説明したほうが、状況が伝わりやすいでしょう。
もちろん、理由が研究上の追加実験であっても、共著者の確認であっても、出張や休暇などの個人的・業務上の事情であっても、まずは相談してみることが重要です。
延長をお願いするときの4つのポイント
では、実際に編集者へ何を書けばよいのでしょうか。
基本的には、次の4点を押さえれば十分です。
1.論文を特定する
まず、
- Manuscript ID
- 論文タイトル
などを記載します。
編集部には多数の論文が届いているため、どの論文についての問い合わせなのかを明確にしましょう。
2.現在の締切を確認する
「現在の締切は○月○日です」と明記します。
これにより、編集者も延長前後の日付を確認しやすくなります。
3.延長が必要な理由を簡潔に説明する
ここで重要なのは、長々と事情を説明しすぎないことです。
たとえば、
We need additional time to complete the revisions and obtain final approval from all co-authors.
(修正を完了し、すべての共著者から最終確認を得るために、追加の時間が必要です。)
のように、簡潔に説明できます。
日本の連休が関係している場合には、
Due to the upcoming holidays in Japan, we need additional time to coordinate with our co-authors and complete the final revision.
などと説明することもできます。
4.「いつまで延ばしてほしいか」を具体的に伝える
「もう少し時間をください」だけではなく、
We would be grateful if you could extend the deadline to October 10.
のように、具体的な希望日を提示することがポイントです。
Elsevierの公式案内でも、延長申請の際には「必要な追加期間」「理由」「希望する新しい提出日」を伝えるよう案内されています。
また、JAMA編集者による著者向けガイドでも、締切に間に合わない場合には編集部に延長を依頼し、その際には代替となる提出期限をできるだけ具体的に提案することが勧められています。
できれば「締切が過ぎる前」に連絡する
これは非常に重要です。
「今日が締切だけど、間に合わなかった。明日になってから連絡しよう」
という対応は避けたほうがよいでしょう。
可能であれば、間に合わないと分かった時点で、締切前に連絡するのが基本です。
実際、Wileyの著者向け規程でも、延長を希望する場合には期限前に問い合わせることが明記されています。
また、JMIR Publicationsでは、修正版の期限に間に合わない可能性がある場合には延長を申請できる一方、期限を過ぎても連絡がない場合には、原稿が投稿キューから外される可能性があると説明しています。
つまり、
「遅れてしまってから謝る」より、「遅れそうだと分かった時点で相談する」
ほうが適切なのです。
延長依頼メールは、それほど長くなくていい
実際のメールは、非常にシンプルで構いません。
たとえば、次のような構成です。
Subject: Request for Extension of Revision Deadline – Manuscript ID XXXX
Dear Dr. XXX,
Thank you very much for giving us the opportunity to revise our manuscript entitled “XXX” (Manuscript ID: XXXX).
We are currently working on the revision; however, we are afraid that we may not be able to meet the current deadline of September XX due to XXX.
Therefore, we would be very grateful if you could extend the deadline to October XX.
We sincerely apologize for any inconvenience this may cause and greatly appreciate your kind consideration.
Best regards,
XXX
もちろん、実際にはジャーナルの指示に従って調整する必要があります。
また、「個人的な事情なので書きにくい」という場合も、詳細をすべて説明する必要はありません。
たとえば、
due to personal circumstances
と簡潔に伝える方法もあります。
重要なのは、編集者が「なぜ延長が必要なのか」「いつまでなら提出できるのか」を判断できる情報を提供することです。
延長が認められたら、必ずその期限を守る
もう一つ大切なのは、延長してもらった後です。
一度延長してもらったからといって、さらに何度も延長できるとは限りません。
たとえばJMIR Publicationsでは、最初の延長後にさらに延長を希望する場合は、Editorによる確認が行われるとされています。また、データの時間的な重要性などによっては、延長が認められない可能性もあります。
したがって、延長を申請するときには、
「とりあえず1週間延ばしてください」
ではなく、
「実際に完成できる日を考えて、その日を具体的に提案する」
ことが重要です。
「期限に間に合わないかも」と思ったら、早めに相談しよう
ジャーナルの締切は、研究者にとってプレッシャーになるものです。
しかし、
「締切に間に合わない=論文が終わる」
とは限りません。
実際、多くのジャーナルでは、一定の条件のもとで修正版の提出期限の延長を認めています。
一方で、延長の条件はジャーナルごとに異なります。
したがって、
- ジャーナルのAuthor Guidelinesを確認する
- 延長に関する規定を確認する
- 間に合わないと分かったら早めに連絡する
- 延長理由を簡潔に説明する
- 希望する新しい提出日を具体的に提示する
- 延長が承認されたことを確認する
- 承認された新しい期限までに提出する
という流れを覚えておくとよいでしょう。
そして、「どう書けば失礼にならないか分からない」「英語での依頼文を作るのが難しい」という場合には、そこも一人で悩む必要はありません。
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NAIでは、論文そのものの英文校正だけでなく、ジャーナル編集者へのレター作成もサポートしています。
「締切を延長してほしい」という依頼は、単に英語を訳せばよいものではありません。
- どの程度の事情を説明するのか
- どこまで謝意を示すのか
- 希望する延長期間をどう伝えるのか
- 編集者に失礼にならない表現になっているか
- ジャーナル側の状況を考慮した依頼になっているか
など、相手が編集者であることを踏まえた文章作成が重要です。
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「締切に間に合わないので、編集者に延長をお願いしたい。でも、どう書けばいいか分からない」
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参考文献
Elsevier. (2026, September 11). Could you extend the due date of my revision? Journal Article Publishing Support Center. https://www.elsevier.support/publishing/answer/could-you-extend-the-due-date-of-my-revision
JMIR Publications. (n.d.). Extension request: Revised manuscript and reviewer responses. JMIR Publications Support. https://support.jmir.org/hc/en-us/articles/115001333167-Extension-Request-Revised-Manuscript-and-Reviewer-Responses
Royal Society of Chemistry. (n.d.). Revise or transfer your article. https://www.rsc.org/publishing/publish-with-us/publish-a-journal-article/revise-or-transfer-your-article
Laryngoscope Investigative Otolaryngology. (2025, January 16). Author guidelines. Wiley Online Library. https://onlinelibrary.wiley.com/page/journal/23788038/homepage/forauthors.html
