英語論文を執筆する際、「文法的には正しいはずなのに、英語として自然な文章になっているか自信がない」「自分の研究内容を、海外の研究者に正確に伝えられているだろうか」と悩んだことはありませんか?
英語論文では、専門的な知識や研究成果そのものが重要であることはもちろん、読者が内容を正確に理解できるように文章を構成することも大切です。
日本語で考えた内容を英語に置き換えるだけでは、文が長くなりすぎたり、回りくどい表現になったりすることがあります。また、冠詞の使い分けや、投稿先の学術雑誌が指定する英語表記への対応など、英語を母語としない研究者が悩みやすいポイントもあります。
こうした課題について、科学論文の英文校閲を手がけるNAIは、2018年2月1日に公開した公式コラム「非英語圏の研究者が英語論文を書く時のポイント」で、Editor C.Jによるアドバイスを紹介しています。
今回は、このコラムを参考に、英語論文をより読みやすく、明確な文章にするための7つのポイントを具体例とともに解説します。投稿前の英文チェックにも、ぜひお役立てください。
参考:NAI公式コラム「非英語圏の研究者が英語論文を書く時のポイント」(2018年2月1日)
https://www.nai.co.jp/recommend/column2018.html
1.1つの文に情報を詰め込みすぎない
日本語で研究内容を説明するとき、複数の情報を1つの長い文にまとめることがあります。しかし、その構造をそのまま英語にすると、主語と動詞の関係が分かりにくくなったり、読者が文の要点をつかみにくくなったりすることがあります。
NAIのコラムでも、日本人が書く英語には、複数のポイントやアイデアを1つの文に盛り込みすぎる傾向があり、2~3個の短い文に分けたほうが読みやすくなる場合があると指摘されています。
例えば、次のような文章を考えてみましょう。
改善前(例)
The treatment significantly reduced inflammation and improved tissue recovery, which may be associated with changes in gene expression and could provide a basis for developing new therapeutic strategies.
この文には、炎症の減少、組織の回復、遺伝子発現との関連、新しい治療法への応用という複数の情報が含まれています。
改善例
The treatment significantly reduced inflammation and improved tissue recovery. These effects may be associated with changes in gene expression. The findings could provide a basis for developing new therapeutic strategies.
このように文を分けると、研究結果とその解釈、さらに研究の意義が段階的に伝わります。
ただし、短い文に分ければ必ずよいというわけではありません。研究結果の関係性や論理の流れを保ちながら、読者が理解しやすい長さに調整することが大切です。
2.冠詞「a」と「the」を適切に使い分ける
英語論文を執筆する際、日本人研究者が特に悩みやすい項目の1つが冠詞です。
NAIのコラムでは、英語の「a」と「the」の使い分けは、日本語を学ぶ英語話者が「は」と「が」の違いを理解する難しさに似ていると説明されています。
例えば、次の2つの表現を比較してみましょう。
- We observed a significant difference between the two groups.
- The significant difference was associated with changes in gene expression.
最初の文では、差があることを新たに提示するため「a」を使っています。2番目の文では、すでに述べた特定の差を指しているため「the」を使っています。
もっとも、実際の冠詞の選択は文脈によって変わります。初出かどうかだけで機械的に決まるものではなく、対象が特定されているか、可算名詞か不可算名詞かなども関係します。
冠詞の誤りは一つひとつが小さく見えるかもしれません。しかし、論文全体で繰り返されると、英文の自然さに影響することがあります。
冠詞だけを個別に確認するのではなく、前後の文脈を含めて原稿全体を見直すことが重要です。
3.投稿先の指定に合わせて米国英語・英国英語を統一する
英語には、米国英語(American English)と英国英語(British English)など、地域による表記の違いがあります。
NAIのコラムでは、投稿先の学術雑誌がどちらの英語を指定しているかを確認するよう勧めています。
代表的なスペルの違いを見てみましょう。
| 意味 | 米国英語 | 英国英語 |
| 風味 | flavor | flavour |
| 色 | color | colour |
| 貧血 | anemia | anaemia |
| 組織化する | organize | organise(英国式の一例) |
こうした違いは、単語の意味や研究内容を変えるものではありません。しかし、原稿内で米国式と英国式が混在すると、表記の統一性が損なわれます。
まずは投稿規定(Instructions for Authors)を確認し、指定があればそれに従いましょう。指定が明確でない場合は、既刊論文やジャーナルの執筆要領を確認するのも方法の1つです。
スペルの確認には、次の辞書も参考になります。
- 米国英語:Merriam-Webster Dictionary
https://www.merriam-webster.com/ - 英国英語:Oxford English Dictionary
https://www.oed.com/
なお、スペルだけでなく、句読点、略語、単位、参考文献の書式などにも投稿先ごとのルールがあります。英文の見直しと並行して、投稿規定との整合性も確認しましょう。
4.難しい単語よりも、明確で簡潔な表現を選ぶ
専門的な研究成果を英語で説明しようとすると、できるだけ高度で学術的に見える単語を使いたくなることがあります。
しかし、難しい単語や複雑な言い回しを使うこと自体が、論文の質を高めるわけではありません。
NAIのコラムでは、読者が伝えたいメッセージを理解できることが最も重要であり、可能な限り、簡潔な言葉と短い文を使うよう勧めています。
例えば、次の表現を比較してみましょう。
| 回りくどい表現 | 簡潔な表現 |
| all over the world | worldwide / globally |
| little by little | gradually |
| On the other hand, ...(逆接を意図する場合) | However, ... |
簡潔な表現は、文意をつかみやすくし、学術論文に適した文体を整えるうえでも役立ちます。
ただし、すべての長い単語や表現を短くすればよいわけではありません。専門用語には正確な意味があるため、分野で定着した用語を優先すべき場合もあります。また、「On the other hand」と「However」は文脈によって機能が異なるため、単純に置き換えられないことにも注意が必要です。
目指したいのは、難しい表現を避けることそのものではなく、研究の内容を正確に保ちながら、読者にとって分かりやすい英語にすることです。
5.口語表現や短縮形を避け、学術論文に適した文体にする
英語のメールや日常会話では、短縮形やカジュアルな表現がよく使われます。しかし、学術論文では、投稿先のスタイルに合ったフォーマルな表現を選ぶことが基本です。
NAIのコラムでは、例えば「don't」のような短縮形を「do not」に置き換えることが勧められています。
例
- 口語的な表現:The results don't support our hypothesis.
- フォーマルな表現:The results do not support our hypothesis.
このような修正によって、文章の文体を整えることができます。
ただし、短縮形があらゆる学術雑誌で一律に禁止されているわけではありません。投稿規定や分野の慣習に従うことが重要です。
また、単に短縮形を展開するだけでなく、文全体が研究論文にふさわしい表現になっているかも確認しましょう。
6.文頭の数字や数値の表記を見直す
英文では、文頭に数字を置く表現を避けるよう求められることがあります。NAIのコラムでも、文頭の数字はややくだけた印象を与える場合があるため、文を組み替えるか、数字を英単語で表記する方法が紹介されています。
例えば、次の文を考えてみましょう。
修正前
20 college students participated in this study.
修正例1:数字を英単語にする
Twenty college students participated in this study.
修正例2:文の構造を変える
The participants were 20 college students.
いずれも、文頭に数字を置かずに情報を伝えることができます。
ただし、数値の表記ルールはジャーナルや分野によって異なります。文頭の数字を必ず英単語にするのか、文全体を組み替えるのかについては、投稿規定を確認してください。
特に、実験条件、サンプルサイズ、測定値、統計結果などでは、表記を整える際に数値そのものを変えないことが大前提です。
7.名詞中心の表現を、動詞を使った明確な文章にする
学術英語では、動作を名詞で表現する「名詞化」が多く見られます。名詞化は適切に使えば便利ですが、必要以上に多用すると、文章が長くなったり、動作の主体が分かりにくくなったりすることがあります。
NAIのコラムでは、可能であれば名詞と動詞を組み合わせた回りくどい表現より、動作を直接表す動詞を使うことが勧められています。
修正前
Segmentation of images was done.
修正例
Images were segmented.
修正例では、「segmentation of images was done」という名詞中心の構造を、「images were segmented」という動詞中心の構造に変更しています。より簡潔に、何が行われたのかを伝えられます。
ほかにも、文脈に応じて次のような見直しができます。
- The analysis of the samples was performed. → The samples were analyzed.
- An evaluation of the method was conducted. → The method was evaluated.
ただし、こうした変換が常に最善とは限りません。研究者が実施した行為を強調したい場合や、特定の方法・手順を名詞として扱う必要がある場合には、元の表現が適切なこともあります。
重要なのは、名詞化を機械的に削除することではなく、文章の意味と論理を保ちながら、動作や関係性が明確に伝わる形に整えることです。
投稿前に確認したい!英語論文のセルフチェックリスト
ここまでのポイントを、投稿前の確認に使えるチェックリストにまとめました。
- 1つの文に複数の情報を詰め込みすぎていないか
- 冠詞「a」「an」「the」の使い方が文脈に合っているか
- 米国英語・英国英語のスペルが統一されているか
- 必要以上に難しい単語や回りくどい表現を使っていないか
- 投稿先に適したフォーマルな文体になっているか
- 文頭の数字や数値の表記が投稿規定に合っているか
- 名詞化が多すぎず、動作や関係性が明確に伝わるか
- 文章を簡潔にする際に、研究内容や数値、論理関係が変わっていないか
- 投稿先のInstructions for Authorsを確認したか
セルフチェックは、英文の問題点を見つけるための有効な第一歩です。一方、冠詞の選択や自然な語法、専門分野に適した表現などは、単語や文法だけを確認しても判断しにくいことがあります。
また、英文として自然に見えるように修正した結果、研究者が意図した意味から離れてしまっては本末転倒です。表現の改善と、研究内容の正確性を両立させることが重要です。
英語論文の仕上げには、専門家による英文校閲という選択肢も
英語論文では、文法ミスを修正するだけでなく、読みやすさ、論理の流れ、用語の一貫性、投稿先のスタイルなど、複数の観点から原稿を確認する必要があります。
自分で何度も読み返していると、内容を理解しているからこそ、文章の分かりにくさや不自然な表現に気づきにくくなることもあります。
そのようなときは、第三者の視点を取り入れることも有効です。
NAIでは、科学論文の英文校閲・翻訳をはじめ、研究者の論文投稿を支援するサービスを提供しています。
NAIの英文校閲・校正サービス
研究内容を正確に保ちながら、英文法、語法、文章の明確さなどを見直したい方には、NAIの英文校閲・校正サービスをご検討ください。
NAIでは、カジュアル校正を除く英文校閲サービスを博士号取得者が担当しています。専門的な研究内容を踏まえた英文の確認を希望する研究者の方に適した選択肢です。
サービスの詳細はこちら:
まずは軽い英文チェックを希望する方へ
原稿全体の大幅な見直しではなく、英文の基本的な確認を希望する場合は、カジュアル校正も選択肢の1つです。ご希望の確認内容に応じて、サービスをお選びください。
カジュアル校正の詳細はこちら:
なお、英文校閲は、論文の採択や掲載を保証するものではありません。研究内容の妥当性や投稿先への適合性などについては、別途確認が必要です。
まとめ:読み手に伝わる英語が、研究成果を届ける第一歩
英語論文を執筆するうえで、難しい単語や複雑な構文を使うことが必ずしも重要なわけではありません。
NAIのEditor C.Jが2018年のコラムで紹介したように、文を適切な長さに整え、冠詞やスペルを確認し、簡潔で明確な表現を選ぶことは、読者に研究内容を伝えるうえで大切なポイントです。
今回紹介した7つのポイントを振り返り、投稿前に原稿を見直してみましょう。
研究成果を正確に、そして分かりやすく伝えるために。 ご自身での確認に加えて、必要に応じて専門家による英文校閲も活用し、納得のいく原稿に仕上げていきましょう。
NAIの英文校閲・校正サービスについては、以下のページをご覧ください。
